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【イベントレポート】人事限定「タニモク」フェス ~DAY2・心理的安全性編~

「タニモク」は3~4人1組で目標をたてあうことで、自分の活かし方をみつけるワークショップです。
イベント ▶マニュアル ▶目次 ▶活用事例

こんにちは!「タニモク」編集部です。
『「タニモク」で組織を活性化させる』をテーマに、2023年1月11日・12日の2DAYSでオンライン開催された人事限定「タニモク」フェス。

今回のイベントでは、DAY1に「タニモク」未体験の方にワークショップを経験いただき、DAY2はゲスト企業に活用事例をご紹介いただいた後、テーマごとに分かれて「実践共有会」を行いました。

この記事では、【心理的安全性】をテーマに、ダイハツ工業株式会社での「タニモク」事例と実践共有会の様子をご紹介します。


【ミドルマネジメントから始める心理的安全性】での実践内容

ゲストスピーカーとして登壇していただいたのは、ダイハツ工業株式会社の住本裕司さん。「タニモク」と心理的安全性の親和性をはじめ、部門を超えた仲間づくりのコツと、「タニモク」を広めるにあたっての工夫点などをお話いただきました。

心理的安全性の取り組み背景

エンジン領域で世界レベルの飛躍を見せていたダイハツ工業株式会社に、「世界一のスモールカーでエンジンを作りたい」という想いで入社した住本さん。2006年には「エンジン・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、「会社に夢を叶えてもらいました」とおっしゃっています。

しかしその後、全社員意識調査における「ダイハツで働くことに誇りを感じる」という項目で、室長を務める所属部署が社内で最下位に。そのような環境下、画期的な商品を生み出すこともできなくなったと感じていたとき、心理的安全性という考え方に出合ったそうです。

「大きな成果=イノベーション」を起こすためには、「良い土壌=心理的安全性」が必要と感じた住本さん。心理的安全性の重要性を認識したうえで、地位や経験にかかわらず誰もが素直な意見や素朴な疑問を言える組織・チーム運営を目指すことに。「世の中の記憶、記録にも残るエンジンを創出し、自分もお客様も笑顔にする」と想いを新たに奮起。夢を叶えてくれた会社に恩返ししたいと、所属部署の改善をスタートさせることにしました。

住本さんが大事にしたのは、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4つの因子です。これら4因子は、高ければ高いほどチームとしての心理的安全性が高いと言われています。「タニモク」と心理的安全性は親和性が高いと感じ、所属部署で「タニモク」を始めました。

所属部署改善における全体像

まず心理的安全性における全体的なフレームワークとして、以下の4つを挙げました。

1)共通言語づくり
言葉をいかに浸透させるか。部門トップ層の理解を得て、部方針へ織り込む

2)実践(小さな行動)
小さなことを必ず行動に移す研修設計や仕掛けを意識

3)見える化
32部署(約2500名)において、エンゲージメントサーベイを実施。職場の課題を見える化して、改善策を実行

4)広げる(仲間づくり)
縦・横・斜めの絆をどう強めて広げていくか → ここで「タニモク」を活用

対象者とコンセプト

対象者は、コロナ禍に入社し研修で対面することがなく、飲み会などのコミュニケーションも取りづらく、横のつながりが結びにくかった入社1年目~3年目の人、同期間のつながりがない中途入社の人、30代の次世代リーダーとなる中堅クラスの人です。「同世代×組織横断」をコンセプトに、普段仕事で関わることがない人同士で「タニモク」を行っているそうです。関係性が薄い人とでも、同世代の人からの意見や助言は効果的だと実感しているとのことです。

工夫点

工夫点としては、無限に連鎖していくねずみ算の方式を用いていることです。住本さんが2022年6月に「タニモク」に出会い、4人でやってみたところ、心から良いワークショップだと感じたそうです。

そこでご自身が起点となり、第1期「タニモク」を開催。その際住本さんがファシリテーターを務めました。第2期の参加者を募る際には、第1期「タニモク」の参加者が、「タニモク」体験者ならではの視点でどんなワークなのか、どんな学びがあって、実際にどういう目標をたてたのかを盛り込みながら宣伝していきました。また第2期のファシリテーターは第1期の参加者が担当。こうして、参加者が次の「タニモク」の宣伝のファシリテーターを務める方式でどんどん裾野を広げていったのです。2022年8月〜12月に27部署で50名くらいの方が「タニモク」を体験するまでに浸透しました。

「タニモク」に限らず開発や研修において、住本さんが重視しているのがラーニングピラミッド。講義だけでは5%しか理解・習得ができないと言われており、他人に教えることで90%になるという考えです。この考えに基づき、「学び」「共有」「実践」というサイクルを回すことを大切にしているそうです。

「タニモク」の成果

参加者からは、有意義な声が寄せられました。「横のつながりが少ない中途採用者にとっては必須の活動」との感想に、住本さんは狙っていた層からの手応えを感じることができ嬉しいとのこと。また、縦・横・斜めの絆を強めることに「タニモク」が非常に寄与していることも実感したそうです。

「人に寄り添って共有する時間は癒やされた」との声には、日ごろ些細な会話すら難しい多忙な中、「タニモク」で時間と活動を共有したことで「メンターメンティーの関係性の構築」にもつながることを感じたとのこと。

「タニモク」は、最良のメンターを見つけることにも活用できます。詳しくは以下の記事をご覧ください。

また参加者からの感想をみると、チームの心理的安全性を構成する4因子「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」が当てはまるものが多いのが特徴です。「タニモク」はまさに心理的安全性との親和性が高いと言えるのではないでしょうか。

「タニモク」を取り入れる前から、心理的安全性を高めるためにさまざまな取り組みをしてきた住本さん。これからもよりよい組織づくり、一人ひとりのモチベーションアップに多角的に尽力したいと話していました。


質疑応答/ディスカッション

続いては、参加者が登壇者に直接質問ができる「Q&A+ディスカッション」です。参加者のみなさんには興味のあるブレイクアウトルームに入室していただき、より深い話しが繰り広げられました。

Q:心理的安全性においては、中間層(マネージャー等)の関わり方が肝になったのではないでしょうか。実施前後で、中間層の様子(課題等)はどう変わりましたか?

住本さん(以下略):自分が他部署から異動して室長になったときに、全員と面談しました。エンゲージメントサーベイの結果と合わせて「上司と部下の間でコミュニケーションがうまく取れていないこと」が課題として見えてきました。その結果に反発する中間層もいましたが、部下も上司も対等な立場として、みんなで組織を変えていこうと話し、導入しました。

すると、部署みんなの意識が変わり、部署内の課題はほとんどなくなりました。だんだん会社のビジョンに対する意見などが出てきましたが、これは中間層を含め社員の考え方・視点が内向きから外向きに変わったからだと思います。

Q:ミドルマネジメントというと、中には変化に抵抗のある人、自分は変われないと思いこんでいる人もいると思います。そのような方にはどのようにアプローチしていますか?

取り組みを進める中で、もちろん協力的ではない人もいました。人事的な立場だと難しいかもしれませんが、これまでの組織の室長としては、全員の意識を変えようとは思ってはいませんでした。

「262の法則」に鑑み、中立層の6割の人にいかに行動してもらうかということを重視しました。何か新しいことを始めるときは、全員というより中立層である6割の人をどうこちらに向かせるかが重要と考えています。

Q:部長や課長たちに「タニモク」をやってもらうために、どんな工夫をしているか教えてください

職位が上の人、部署内で影響力がある人を巻き込むのがよいと思います。室長だった私の場合、事前に部長に詳細を説明し、部内で最初の賛同者になってもらいました。そうすると、他のメンバーも参加しやすくなり、結果的に広がっていきました。

Q:心理的安全性について研修などをする中で、「理解する」から「実際の行動」に変えていくために工夫していることはありますか?

どんな研修にも当てはまることだと思いますが、気付いただけで終わらせず行動に移すことが大事です。研修後、受講者には「こういう気付きが得られた」「今後は〇〇を目指します」だけでなく「実際にどんな行動をするのか」を必ず言語化してもらっています。

自分のコンセプトとして「小さな行動を薄く、長く」と掲げています。研修後には簡単なシートに「明日から何をするのか」を具体的に書いてもらい、その1週間後に振り返りを行っています。そして、個別にメールでフォローする方法で、1カ月後、1年後と行動の振り返りを続けています。

Q:よりよい「タニモク」を実施するために心がけていることは?

ワークショップを行うにあたって、自分の中で原点としているのがダニエル・キムの「成功の循環」です。周囲とのコミュニケーションなど「関係の質」が高くなると、考え方も前向きになり、気付きや良いアイデアを生み出す「思考の質」が上がります。

それが、主体性や積極性、新たな挑戦といった「行動の質」を高め、成果が生まれて「結果の質」につながるというモデルです。「結果の質」ばかり考え過ぎるとうまく進まないので、成果を求めるより、「人間関係」「組織と組織の関係」をよりよくすることが重要だと思っています。その手段のひとつが心理的安全性だと捉えています。

Q:取り組んでみて、手応えを感じなかった要素はありますか?

何事も人によって感じ方・響き方が違うので、一概に手応えを感じなかったと認識することはなかったかもしれません。取り組む際には、自分自身、引き出しを多く持つように心がけています。なぜかと言うと、ある目的を達成するためにはいろいろな手段を用意し、さまざまな角度からアプローチしていくのがよいと思っているからです。

また、施策など何かをやめるときは「意思を持ってやめる」ことにしています。惰性でやめたり、自然消滅したりせず、「目的を達成したからやめる」「さらにレベルアップするからやめる」「効果がないからやめる」など、必ず意味を持たせるようにしています。

Q:「タニモク」をやってよかった!と実感したのはどんなときでしたか?

「タニモク」体験者から、「自分の歴史に残るような刺激的な経験だった」と直接感想を言われたときですね。そう言ってくれたのはコロナ禍直前に中途採用された方でした。

入社してからほとんどリモート勤務で、同期がいなく、同世代の社員ともなかなか交流できず、困ったことを話せる場がなかったそうです。「タニモク」がそういう場になったことが嬉しかったと。心理的安全性があるからこその感想だと感じました。

Q:心理的安全性が低い状態で「タニモク」に取り組んでも問題ないのか不安です。どの段階で実施すると効果がありますか?

自分の経験では、同一組織の中で「タニモク」をやったことはなく、他部署で面識がない人同士でやっています。ほぼ初対面に近いので、そういう意味では心理的安全性が低いということはおそらくないと思うんです。

また、参加については強制ではないので、ワークショップをやることに好意的な人がほとんどです。初対面の関係性だからこそ話しやすいということも大いにあるので、そういった環境を整えて実施するのがよいと思います。

Q:社内で「タニモク」を導入することに対して、反対者が多いときはどんな工夫をしましたか?

社内外問わず仲間づくりに注力しました。他部署の人も、1対1での情報交換会をしてそれぞれの職場の取り組みを共有していきました。

また、社外の人との交流も大切にしています。出張やセミナー先では、異業種の人に積極的に声をかけ、交流を続けています。SNSでの繋がりも大事にしています。一人で悩まずに、周りの方を巻き込むことがコツだと思います。

Q:住本さん自身、モチベーションを見失いかけたことはありませんでしたか?もしあったとしたら、それはどう乗り越えましたか?

自分自身ずっとハイテンションで前向きにできているわけでもないので、困難な場面にぶつかることもありました。そういうときは、周りの方から自分の行動に対する感謝の言葉を見返しています。会社で、毎週金曜の定時終了間際に「感謝の時間」という活動があります。これは、全員が1週間を振り返って感謝を伝えたい人に、「ありがとう」+どういう行動に対してなのか理由を添えて、チャットで送るというものです。心理的安全性の中でも「行動分析」は重要な要素のひとつで、「どういう行動に対してか」ということまで伝えるのがポイントです。

もらって嬉しかった言葉は「よい上司のもと、よい職場で働けて幸せです」。そう言ってくれる人が1人でもいるのなら、自分のやっていることは間違いないし、さらに頑張れると気持ちが前向きになります。好循環になるように、自分も毎週、他部署の人を含め5人には送っています。

Q:人事制度を導入する際に、手段が目的化するケースが多いと感じています。何か工夫している点はありますか?

仕事の目的を言語化することが重要だと思っています。技術職のときは、すべての仕事において、書類に「この仕事の目的は何か?」と書いてもらっていました。そうすると、目的として書いていることが改めてみると「手段」になっていることが多いと気付くんですね。「目的」と「手段」をしっかり分けて考えると、手段が目的化することを防げるのではないでしょうか。


「タニモク」編集部より

熱意を持って入社し夢を叶えた後、低迷期を経験した住本さん。そこから、心理的安全性の重要性を認識し「タニモク」を活用することで、部署の雰囲気が変わり、みんなのモチベーションがアップし、社内での評価も上がったと嬉しそうな表情で話す姿が印象的でした。地道な仲間づくり、部署内で「タニモク」を広めるコツなど、みなさんの参考になることも多いのではないでしょうか。

DAY2では、この記事でご紹介した【心理的安全性】の他に、【研修/オンボーディング】【ダイバーシティ】をテーマにした共有会も開催しています。他の共有会の様子やDAY2全体の記事、DAY1の様子も、以下からぜひご覧ください。


「タニモク」の台本や映写資料は、公式ホームページよりすべて無料でダウンロードできます。
友人同士や組織で「タニモク」を実施したいという方は、マニュアルをチェックしてみてください。
実際に「タニモク」を体験した後は、「#タニモク」をつけて感想を発信していただけたら嬉しいです。みなさんの投稿も楽しみにしています!


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