【ユーザーインタビュー】第3回 大学教員・石橋哲さん『「タニモク」は心の防護服を脱げる現代の「茶の湯」のよう』
こんにちは!「タニモク」編集部です。
2022年12月からスタートした【ユーザーインタビュー】では、「タニモク」を体験された方々に「タニモク」との出会いや活用方法などを伺っています。
3回目となる今回ご登場いただくのは、東京理科大学大学院で教授をされている、石橋哲さんです。「タニモク」の魅力や、定期的に振り返り会を行っているメンバーとの関係性についてお話しいただきました。
お話しいただく方
「タニモク」実施前のお話
ーまずは、石橋さんの「タニモク」との出会いを教えてください。
石橋さん:2017年に「タニモク」のα版に参加したことがきっかけです。ワークショップにまだ「タニモク」という名前すらついていなかった時期に知人がSNSで紹介しているのを見て、ワークショップの内容と、そこに参加されている方々に興味を持ちました。
ー「タニモク」のどのような点に興味を持っていただけたのでしょうか?
石橋さん:当時新しい対話の場を探していたということもあるのですが、一番は「対話を通して心の内を外に出す」というワークショップの仕組みです。
私は、国会事故調に参画していた2012年9月から、福島原発事故の原因や教訓を考えるプロジェクトを発足しました。大学生や社会人、高校生と対話を重ねて導き出された答えの一つとして、「心の壁をいかに取り払うか」が重要だと考えるようになりました。そのような中で「タニモク」の枠組みを知り、目線がぴったりフィットした気がしたんです。
ー実際に「タニモク」に参加されて、どのような感想をお持ちになりましたか?
石橋さん:新しい世界に出会えました。ふつう、「現在の自分」を取り巻くコミュニティは、"知人の知人"のように、過去の延長線上でしかないですよね。「タニモク」はこれまでにない新たなつながりをつくることができますし、初対面の方とあっという間に腹を割った話ができるようになったのが驚きでした。
「タニモク」に参加される方は、「心の壁を取り払うことにあまり抵抗感がない方」や「新しい自分に出会いたい方」も多いと思うので、そのような方々と出会い、自分にない目線を共有できるというのはとても貴重な機会でした。
「タニモク」の活用方法
ー石橋さんには、定期的に「タニモク」を開催されているメンバーがいらっしゃるそうですね。
石橋さん:はい。2021年5月に参加した公式「タニモク」で一緒になったグループのメンバー2名と、半期に1回程度、進捗報告会を行っています。回数でいうと、3、4回程度でしょうか。
先日も1時間半ほどかけて、【あけましておめでとう「タニモク」】をしたんです。オンラインの書き初めツールを使用して、それぞれが「一年を振り返って一言」「今年の抱負を一言」をしたため、近況報告などを行いました。
2名とも女性で、年齢もバラバラ。1人はコンサル会社で対話の場づくりを担当されている方、もう1人は都市開発関係のお仕事をされている方だそうです。住んでいる地域も異なるので「タニモク」もずっとオンラインで行っていたのですが、昨年(2022年)秋に初めて対面での食事が実現しました。
ー実際に会ってみて、オフラインとオンラインの違いは感じましたか?
石橋さん:オンラインでお話をして信頼の基礎工事ができている気分になっていたので、オフラインで会うのは初めてであることにお互いにびっくりした、という感じでした。
ーそれまでにしっかりと関係性が構築されていたからこそのエピソードだと感じました。どのようにしてそのような関係性がつくられるのでしょうか?
石橋さん:さきほどの話にもありましたが、やはり心の壁を越えているからだと思います。公式「タニモク」に参加されている時点で、「タニモク」への心構えや話すことへの積極性があったことも一因だとは思うのですが、個人的には、自分の現状を「絵」にするところもポイントだと考えています。
文章で説明をすると、見られたくない部分をあえて隠してしまうこともあると思うのですが、絵で表現をすると、絵を説明するためについその弱い部分や隠したいところまで説明しなければいけません。「おもしろい部分や興味をひく部分をお互いに深掘りできる」ところや、「ディベートではなく安心して話せる空気感」が心の壁を越えることにつながったのかなと思います。
ーありがとうございます。ご自身で「タニモク」を活用されているだけでなく、学生さんにもすすめていただいていると伺ったのですが。
石橋さん:福島原発事故の報告書をもとにいろいろなことを考える際に、さまざまな高校生と関わるのですが、彼らは、自分とは違う学校の人と出会うんですね。いわば緊張状態な訳です。
そこで「タニモク」の簡単バージョンをアイスブレイク的にやってみると、自分の想いを率直に、包み隠さず外に出す練習が簡単にできますし、メンバーの質問や目標提案を"攻撃"と受け取らない接し方ができるんです。
ディスカッションでない対話の在り方がすぐに体感できるので、あっという間に心の壁を取り払える。「タニモク」は、心と心が接触するような場の空気感をすぐにつくれるすごいツールだと思っています。
ー「タニモク」後の学生さんの反応はいかがですか?
石橋さん:学校生活って、一見楽しそうに見えても心の中はそうでなかったり、結構防御したりしている部分も多いと思うんです。けれど、「タニモク」をやると心の防護服を簡単に脱げますし、対話をしたチームメンバーは「防護服を脱いで接せる仲間」という心持ちにお互いなっている。心の壁を乗り越えて、しっかりした信頼関係をつくりやすくなっていると感じています。
「タニモク」を実施して感じたこと
ー今まで実施した「タニモク」の中で、印象に残っているエピソードを教えてください。
石橋さん:今でも交流が続いているメンバーに目標をたててもらったお陰で、学会で発表ができたことです。私はもともと民間出身で高校生から社会人までさまざまな方との対話をずっと続けてきましたが、自分がこれまでやってきたことと、大学教員として求められている「研究」とが分離している気がしていました。
「タニモク」で「研究のあり方で苦悩している」「分離によるリソースのやりくりが難しい」という話をしたところ、メンバーから「一緒にしてしまう」という目標をいただいたんです。「"自分が日頃やっていることをテーマとした研究"という形にアレンジしてしまえばいい」と。目から鱗でした。
関連するキーワードもいくつかいただき、「確かにそういう目線だとつながるな」ととても納得して、大学の教員として考えているテーマと、日頃取り組んでいることの関連性を整理しました。そして「ここの筋を通したらロジックがつくれる」と感じた部分を学会で発表したんです。
2021年の5月初めの「タニモク」で出会い、10月に発表できたので、目標達成までの期間は半年に満たないくらいでした。論文が完成した瞬間はとても嬉しくて、メンバーに「お陰様で完成しました!」とすぐに連絡をしました。
メンバーからも「プロジェクトが完成しました!」と報告をいただいたり、内覧会へご招待いただいたりと、よい関係が築けていると思います。
ー素敵なエピソードですね。読者の皆さんの中には、「目標をたてあった仲間と定期的につながりを持ちたい」と考える方も多いのではないかと思います。石橋さんは、どのような流れでメンバーとのつながりを継続できているのでしょうか?
石橋さん:半期に1回集まっているメンバーとは、公式「タニモク」の中で「またお話ができたらいいですね」という話が出たんです。そこでSNSのアカウントを公開して、スレッドでつながるようになりました。
実は先日も公式「タニモク」に参加したのですが、そのときのグループでも「3カ月ごとに進捗を報告しましょう」という話になり、同じ流れでメッセージのやり取りをしています。目標以外でも仕事の相談や意見交換が行われていますし、メンバーが違うと当然考え方も違うので、おもしろいですね。
それぞれお互いの目標を共有した仲ですし、「タニモク」後は目標に向けて行動を起こそうという気分になっているので、「もっと話したい」「また話したい」と思ったら、率直に伝えてみるとよいのではないでしょうか。
ー少し話し足りないくらいの時間が、次につながるのかもしれませんね。では、ご自身の体験から、どのような人に「タニモク」をおすすめしたいですか?
石橋さん:学校に関わる機会が多いこともあり、先生と生徒でやってみたらおもしろいと思っています。いつもの立場を逆転させて、先生の目標を生徒がたてるということをやったらよいのではないかと。
「先生」という肩書きはとても強固ですが、先生も生身の人間なんですよね。悩める姿をさらせたら先生方はとても楽になる気がしますし、生徒たちが自分の人生を真剣に考える勉強材料になると思います。
いくつかの学校で合同開催してもおもしろそうですし、仮面を被ったりニックネームで呼び合ったりするのもよいかもしれません。
学校に限ったことではないのですが、「●●株式会社の●●です。」と肩書きや属性から入るのではなく、「石橋です。こんなことをしています」「たまたま●●株式会社で働いています」と、"人となり"から入っていく方が、人と人はつながりやすいんじゃないかと思いますね。
ー改めて、石橋さんにとって「タニモク」はどのような存在ですか?
石橋さん:心の壁を取り払うための強力なパワーを持っている取り組みだと思います。昨今、「心理的安全性」という言葉が頻繁に聞かれるようになりましたが、初対面の人との間に簡単に心理的安全性をつくれるって、とてもすごいことだなと感じます。
心理的安全性やイノベーションを生み出すって、個々がいかに腹をくくれるかだと思うのですが、「タニモク」は、そんな覚悟を決めなくとも、ふわっと入っていって、ふわっと出ていけるところがよいですね。「現代の茶の湯」だな、と思います。そうなると「タニモク」を開発した三石さんは「現代の千利休」ですね。
まとめ
ユーザーインタビュー第3回目は、大学教員の石橋哲さんにお話を伺いました。公式「タニモク」で出会ったメンバーからの目標提案が、学会での発表につながったとのこと。お話の随所に、現在もつながりのあるメンバーとの素敵な関係性と強い絆が伺えました。
関係性を築くポイントとなるのは、「心の壁を越える」こと。
「タニモク」では、安心して自分のもやもやや想いを打ち明けることができます。この記事をご覧いただいている皆さんも、気軽に参加し、実際に体験していただけると嬉しいです。
そして、「タニモク」後にグループのメンバーと「また話をしたい」「つながりを継続したい」と思った際には、勇気を出してその想いを伝えてみてはいかがでしょうか。目標や行動を応援してくれるサポーターが、かけがえのないメンターになってくれるかもしれません。
noteでは、今後もさまざまな方の「タニモク」ストーリーをご紹介していきます。次回もお楽しみに。