【活用事例】135名がオンラインで参加。新入社員導入研修×「タニモク」
こんにちは!「タニモク」編集部です。
noteでは「タニモク」を実施した団体の活用事例を定期的にご紹介しています。
今回は、ダイハツ工業株式会社の新入社員導入研修で活用された事例です。新入社員導入研修は1カ月にわたり行われ、「タニモク」はその中のひとつのワークショップとして活用されました。ダイハツ工業株式会社では、これまでも中途採用の方や中堅クラスの方を対象に「タニモク」を導入していましたが、今回は新入社員の方を対象に、参加人数は135名。同社で最大規模の「タニモク」となりました。
新入社員導入研修に組み込まれた背景や他ワークショップとの相乗効果、工夫した点などを、ダイハツ工業株式会社の人事部 人材開発室・住本裕司さんに伺いました。
実施企業と参加者
実施のきっかけと実施前に感じていた課題
ーまずは、新入社員導入研修で「タニモク」を実施することになったきっかけを教えてください。
住本さん:今回は新入社員導入研修で「タニモク」を活用しましたが、これまで弊社では2022年8月から2023年3月までに経験者採用の方や中堅社員、人事を対象に約100名が「タニモク」を経験しています。参加者からは「大きな視点、客観的な視点を考えるコツが掴めた」「新しいつながりができた」など好評です。私自身も「タニモク」を活用しており、「タニモク」は新入社員導入研修でも活かせるのではないかと思い、今回の導入に至りました。
弊社では、新入社員は2年かけて一人前に育てるという人事育成をとっており、そのファーストステップとなる新入社員導入研修は1カ月間設けています。
今回の研修開催にあたり、改めて内容を検討した際、これまでは新入社員導入研修が終わった時点での“あがりの姿”をきちんと捉えていなかったことに気が付いたんです。そこで、今年は新入社員導入研修が終わった時点で到達していたい姿を2点掲げました。
1つ目が「社会や会社で“本当”の自分を知り、自己紹介ができる」です。就職活動を通し、内定を勝ち取るための、ある意味で体裁を整えた自分では、仕事をしていく上ではいつか通用しなくなるんですよね。しっかり内省し、自分の強みを把握し、本当の自分を他人に伝えられてこそ、己の強みを活かせると思っているんです。
2つ目が「配属後、会議で自分の意見・質問をできる」です。仕事をよりよく進めるためには、やはり自分から発言してほしいという思いがあります。
こうした“あがりの姿”を実現するために「タニモク」が非常に活用できると思い、新入社員導入研修に導入しました。
実施目的
ーでは、「タニモク」を実施するにあたり、具体的にはどのような目的を掲げましたか。
住本さん:今回の「タニモク」活用の目的として、以下の3点を考えました。
ここ3年ほどはコロナ禍で、新入社員導入研修はeラーニングを中心にオンラインで行っていました。オンラインだと研修で他人と関わることが難しいですが、「タニモク」ではそれが無理なくできるんです。価値観を共有するためには自己を開示することが大事だと実感していますが、自然と自己開示ができるのが「タニモク」なんです。私は「タニモク」は仕事だけでなく人生にまで影響を与えてくれると確信しています。
「タニモク」で自己効力感を向上させつつ、価値観を共有し、配属後にスムーズに仕事に取り組めることを目的としました。
新入社員導入研修への組み込み方
ー「タニモク」単体でのワークショップではなく、新入社員導入研修の中のひとつのプログラムとして開催したと聞いています。新入社員導入研修にどのように組み込まれたのか、詳しく教えてください。
住本さん:新入社員導入研修は1カ月間行い、「タニモク」は最終プロセスとして取り組みました。
まずは1週目に5人1組に分かれて、マシュマロ・チャレンジといったアイスブレイクを取り入れながらチームの大切さを実感してもらいつつ、チームビルディングをしていきました。ダニエル・キムが提唱している成功の循環のひとつ「関係の質」がとても重要だと認識しているので、1週目では新入社員同士の関係性を深めることに特化。「この仲間なら何を話しても大丈夫」という関係性を構築することに努めました。
2週目は、ストレングスファインダーなど行い、本当の自分の強みを棚卸しして、言語化する取り組みをしました。3週目に配属面談を行うのですが、それまでの2週間のプログラムを進めるうちに希望部署が変わる人もいるんですね。それだけ自分と向き合うことって大切だと思うんです。新入社員だと特に会社について理解できていないことも多いですし、弊社の場合、全員が希望部署に配属されるわけでもありません。でも、自分の軸ができていれば、どの部署でも自分を活かせると考えていて、そのベースを作るのがこの新入社員導入研修なんですよね。
そして、配属が決定した後いよいよ「タニモク」となります。このタイミングに組み込んだ理由としては、配属後に自分の目標や夢を言語化してもらうのですが、そこで「タニモク」をすることで、他人の視点が入り、目標がブラッシュアップできると考えたんです。1カ月かけて、本当の自分を知り、本当の自己紹介ができ、自分の意見がしっかり発言できるようフォローしていきました。
ー「タニモク」単体で行ってももちろん効果はありますが、1週目、2週目と他のプログラムを行ったうえでの、「タニモク」とのセットアップがすばらしいですね。より効果的に活用していただけたのではないかと感じます。
実施内容
ー「タニモク」自体はどのように実施されたのでしょうか。
住本さん:基本的なタイムテーブルは公式と同じように1人30分で進めました。ただ、自己紹介は公式だと2分のところ20分にし、アイスブレイクの場を大事にしました。
ー新入社員導入研修は5人1組で行ったとのことでしたが、「タニモク」は新たなメンバーで組み直したのでしょうか。
住本さん:そうです。3週目までの新入社員導入研修における5人1組は、男女や最終学歴、学部、採用活動時の印象などを考慮し、できるだけ異なる文化や背景を持つメンバーが集まるようグループを構成しました。「タニモク」までの3週間でかなり関係性が構築されていたので、「タニモク」ではあえてリセットし、ランダムにグループを再構成しました。
ー3週目までの新入社員導入研修はリアルで開催し、「タニモク」のみオンラインで行ったとのことですが、「タニモク」をオンラインで開催した理由を教えていただけますでしょうか。
住本さん:「タニモク」以外は、コロナ禍が収束の方向になってきたので、リアル開催でした。「タニモク」を開催した4月26日はオンラインデーとし、新入社員のみなさんには初の在宅勤務をしてもらいました。
会社としての勤務体制は出勤も在宅勤務もできるハイブリッド型です。そのため、この日を在宅勤務の進め方を学ぶ日とし、午前中はツールの使い方や会議設定やディスカッション方法、カメラオンの有効性などをレクチャー。午後はオンラインで「タニモク」を実施しました。
「タニモク」で得られた効果
ー新入社員導入研修に取り入れた「タニモク」としては、どのような効果が得られましたか。
住本さん:1カ月にわたる新入社員導入研修を終え、各部署に配属されてすぐ、配属先の上司の多くが「今年の新入社員は元気がある!自己紹介の精度が高く、夢を語る人もいて、新入社員からパワーをもらえた」と言っていました。自分の目標を1,000名以上の社員の前で堂々と発表した新入社員もいました。私自身の手応えだけでなく、客観的に見ても、新入社員導入研修をするにあたって掲げた“あがりの姿”に近づけたと自負しています。
ー配属先ですでに好印象を持たれているというのは、研修を行った人事の立場としても嬉しいですよね。配属先で新入社員のみなさんがより活躍できるようなフォローは考えているのでしょうか。
住本さん:新入社員導入研修で、新入社員のみなさんが最後に書いた「振り返りワークシート」は、各配属先の上司に渡しています。新入社員が活躍できるかどうかは、上司の指導や関わり方、引き出し方が大きく関わってくるので、5月下旬に上司を対象にしたトレーナー研修を予定しています。双方とも軸をしっかり持ち、活かし合っていくことが大切だと考えています。それが、会社としての大きな成長につながると考えています。
開催時に意識したポイント
ー参加人数が135名と多く、さらにオンライン開催となると、予期せぬトラブルが起こる可能があります。開催にあたり意識したポイントや工夫した点はありますか。
住本さん:オンライン開催だと、メインルームとブレイクアウトルームの行き来がどうしても時間がかかってしまうんですよね。ですので、進行にあたってはバッファを長めに設定しました。
今回の「タニモク」の前、2023年3月に人事部門を対象とした32名による「タニモク」を行っているんですが、実はその時にブレイクアウトルームとの行き来に課題を感じたんですね。今回は3月開催時の4倍以上の参加人数ということで、全体スケジュールに余裕を持たせました。
また、ブレイクアウトルームの行き来を待つ時間、シーンとなってしまうのは盛り上がりに欠けるので、その間は私が小話をして場をつなげました。
ー場を和ませるといった細やかな配慮は、参加者が気持ちよくワークショップを進めるためのポイントにもなりますね。
参加者の声
ー1カ月にわたる新入社員導入研修を終え、新入社員の方からはどのような感想が寄せられましたか。
住本さん:ワードクラウドで表した新入社員の声と、中途採用や中堅社員を対象にしたこれまでの「タニモク」とは観点が異なるコメントは以下です。
新入社員の方が、自分がこぢんまりしていることに気付いた、背中を押してもらえたといった感想が多かったですね。「Will・Can・Must」が明確になったのではないかと思います。また、予想外の感想としては、「自分の好きなことや趣味と、ダイハツにおける目標がつながっていることは自分でも気付かなかった」というコメントです。そこまでの関連性を掴めたことは、今後大きな力になるはずです。
この研修を通して新入社員が感じてくれた「自分の考えや目標を言語化することの大切さ、そしてそれを他人に伝えることで他人の視点を取り入れ、さらに自分の考えや目標をブラッシュアップできる」というのは、会社でプロジェクトを進めていくうえでも有効です。ぜひ今後の仕事の進め方にも活用できるのではないでしょうか。
また、新入社員同士で1年後に振り返り会の予定をたてているという報告がありました。自発的な取り組みが始まっていることは、私としてもとても嬉しく、新入社員導入研修の成果のひとつではないかと捉えています。
担当者コメント
ー改めて、今回「タニモク」を実施した感想や今後の展望をお聞かせください。
住本さん:今回の新入社員導入研修に「タニモク」を実施するにあたり、「タニモク」の有効性は十分わかっているので、悪くはないだろうけれど果たして上手くフィットするか懸念していたんです。
でも、2023年1月に開催された人事限定「タニモク」フェスで、株式会社ADKホールディングスの加藤さんから、新入社員導入研修での「タニモク」活用事例を伺い、弊社でもぜひやってみたいと思ったんですね。
とは言え、目標はたてても忘れてしまいがちなので、会社の人事として今後につながる仕掛けを作っていくことを考えています。「タニモク」を継続することも視野に入れ、好スタートが切れた新入社員をバックアップしていきたいと思います。
ー2022年8月から、「タニモク」実施回数を重ねている住本さんですが、今回を含め実施したうえで課題などお気付きの点がありましたら、教えてください。
住本さん:主人公が他の3人に目標をたててもらっている時、主人公が手持ち無沙汰になってしまうのが気になります。ただ座っているだけでよいのか、主人公に何か配慮したほうがいいのかなって気になるのですが、何かよいアイデアはありますか。
ーなるほど、主人公が待つ時間が気になる方もいらっしゃいますよね。事務局としては以下の2点をおすすめしています。参考にいかがでしょうか。
ー最後に、「タニモク」を実施したいとお考えの人事の方へメッセージをお願いします。
住本さん:人事担当者は立場上、どうしても大きいスケールで考えがちですが、まずはスモールスタートしてみるのがよいと思います。具体的には、自分の権限で集められるメンバー、例えば人事のメンバーに声を掛け「タニモク」をしてみるんです。その際、できれば部長など統括する立場の人を巻き込むのがベストです。
参加メンバーが「いいワークショップだね」と感じてくれれば、会社の人事として展開してみよう、という話につながりやすくなります。また、身近な体験者による「新しいつながりができた」「歴史に残るような刺激的な経験だった」などの生の声は「タニモク」の実施計画を進めるうえで、大きな力になるはずです。
小さくでもいいので、とにかく「タニモク」の輪を広げ、活用してほしいですね。
「タニモク」編集部より
「タニモク」は単体でご活用いただいてももちろん有効ですが、今回のように研修の中のひとつのワークショップとしても大いに活用できます。ダイハツ工業株式会社の活用事例は、それが大いに発揮された「タニモク」だったと感じます。自社での取り組みに悩む人事部門の方の参考にもなるのではないでしょうか。
「タニモク」では、今春より『「タニモク」ラボ』をスタートしています。組織の枠組みを超えたネットワークを作り、組織と個人の活性化をサポートすることを目指しています。現在、参加していただける方を募集しています。ご興味のある方は、ぜひアクセスしてみてください!