社員が目標をたてあう文化を当たり前にしたい
こんにちは!「タニモク」編集部です。
昨今、社員同士で目標をたてあうことで社員のキャリア自律を支援する動きが徐々に生まれてきています。そこで今回は、「タニモク」プロジェクトを推進するパーソルキャリア株式会社の三石原士から、「タニモク」を用いたキャリア・メンタリングをおすすめしたいと思います。
※【キャリア・メンタリングとは】…メンター(指導・助言をする人)とメンティー(サポートを受ける人)が1対1で対話し、キャリア支援や心理的なケアを通じて成長を支援する人材育成手法
現行のキャリア・メンタリングの課題
社員に対する現行のキャリア・メンタリングは、上司と部下の1on1が主体の企業も多いのではないでしょうか。ただし、この1on1だけに依存することには、デメリットもあります。
1つ目は、「視野の制約」です。
上司がメンターになる場合、上司の視点や経験がメンティー(=ここでは部下)に影響を及ぼします。仮に上司が新卒入社から同じ会社、同じ部署ではたらいてきた場合、その視点が部下へのアドバイスに反映され、部下の視野が制約される可能性があります。また、部下が広い視野で社内のキャリアパスを考える際も、特定の経験しかない上司がメンターの場合、適切なアドバイスを行えない場合があります。
2つ目は、上司と部下の「パワーバランス」です。
評価者であり、人事権をもった上司との1on1の場合、オープンで正直なコミュニケーションを阻害する可能性があります。メンティー側は本心ではない話で場を取り繕うということもないとは言えません。結果、真の悩みや課題が表面化しにくく、有効なメンタリングにならないこともあります。
3つ目は、管理職の「時間の制約」です。
近年は、多くの企業では働き方改革を進めつつ、短い時間で業績もあげなければならない管理職の負荷が課題となっています。パーソル総合研究所が実施した調査によると、管理職の課題のトップ3に「組織業務量の増加」「人手不足」「後任者の不在」が挙げられており、メンバーのキャリア支援などに時間を割くことができない様子がわかります。また、支援の時間がないばかりに「後任育成」も果たせないため、そのジレンマが解消されない構図が出来上がってしまっています。
▼パーソル総合研究所 レポート「働き方改革の最大被害者──"受難"の管理職を救え」より
「タニモク」によるキャリア・メンタリング
では、「タニモク」によるキャリア・メンタリングの手法は、1on1とどのような点が異なるのかご説明します。社員同士で目標をたてあい、行動を支援する「タニモク」は、企業内のメンバーのキャリア自律支援と成長支援の双方で効果があり、外部のアワードを複数受賞しています。取り組みの詳細は、下記のURLをご覧ください。
そんな「タニモク」によるキャリア・メンタリングのメリットは以下の通りです。
1:多様な視点と経験の共有
社員同士のキャリア・メンタリングでは、管理職のこれまでの経験と視点だけに頼らない、新たな視点と経験が共有されます。また、異なる背景や役職、部署、別のプロジェクトのメンバーがいる場合には、異なる角度からの視点や知識も共有され、メンター・メンティ―双方の成長を促すことが可能です。
2:パワーバランスの解消/オープンな対話
上司とのキャリア対話とは異なり、「タニモク」では利害関係がないことから、パワーバランスは解消されるはずです。それによってオープンで正直なフィードバックや意見出しが可能となり、メンティーが抱える本当の悩みや課題にアプローチしやすくなります。
3:組織内コミュニケーションと連携の強化
社員同士のキャリア・メンタリングには、異なる部署やチーム間のコミュニケーションを生み、連携を強化する効果もあります。これは、組織全体の知識共有や「誰が、何を知っている」といった暗黙知の共有にもつながり、組織の情報流通を加速させる手助けになります。
こうしたメリットだけでなく、お互いの目標や行動の支援は、メンバーのリーダーシップ強化にもつながり、後任育成の助けになるはずです。また、管理職によるメンバーのキャリア支援の負担も軽減することができるため、「タニモク」を起点としたキャリア・メンタリングの仕掛けは、現状の管理職負担の大きい組織運営を変える力があると言えるでしょう。
「タニモク」を用いたメンタリングの具体的な導入方法
他人に目標をたててもらう「タニモク」をメンバー間のキャリア・メンタリングに活用し、効果を発揮するためには、導入時の進め方が重要です。以下のステップで導入してみてください。
1:「タニモク」のキャリア・メンタリングの目標説明とガイド
キャリア・メンタリングを実行するうえで、まずは「タニモク」を用いる背景やメリット、期待する効果の説明が求められます。また、「タニモク」を継続実施するためのガイドを行い、ペアリングしたメンバー同士で主体的に時間を決め、実施し、行動へのフィードバックをするという「型」を、参加者全員が理解する必要もあります。まずは「タニモク」の導入体験によってワークショップの「型」を覚えてもらい、その後、継続実施するためのガイドを行いましょう。
2:適切なペアリング
社員同士のペアリングを行う際に、2点考慮すべき点があります。1つ目は、「主体性」です。自ら「タニモク」に参加し、目標をたてて、行動するという姿勢がもっとも大切であるため、最初は立候補した社員同士で行うなど、主体性を引き出しながら実施しましょう。
2つ目は、「異なる職種や役職同士でマッチングをする」ことです。それにより「タニモク」ワークで新たな視点が生まれやすく、今後の継続実施のモチベーションにつながります。可能であれば、どのようなひとと「タニモク」をやりたいのかについて事前にアンケートを実施し、なるべく希望に沿ったマッチングを行うとよいでしょう。パーソルキャリア内では希望のタグ付けを行い、半自動マッチングを行う仕組みを構築し、効率を図っています。
3:定期的なフィードバックと行動支援
定期的なフィードバックは、グループごとの自発的なワークにすることが大切です。仮に事務局や人事が日時指定などを行った場合、参加者都合で前回のグループ同士で振り返りができない可能性もあるため、グループ単位で実施日時を決め、ワークをすることが望ましいです。その際は、ワークのためのガイドを必ず行いましょう。
時短勤務など、労働時間内でワークの時間がとりにくいメンバーもいることから、以下のように、3人1組で約60分(1人あたり20分弱)で簡易な「タニモク」を実施するとよいでしょう。
目指すべきキャリア・メンタリングの未来
「タニモク」を活用して主体的にキャリア・メンタリングを行うメンバーが増えることで、目標をたて、行動する活動が起こり、成果がついてくると、社員の主体性が引き出されていきます。また、それぞれの目標に向けた行動による成功体験や失敗体験がグループ間で共有されることにより、個々の社員のパフォーマンスだけでなく、チームやプロジェクトのパフォーマンスにも好影響がでるでしょう。これは、実際にパーソルキャリア内で高パフォーマンスにつながった事例をみてきたからこそ、確信をもって言えることです。
将来的には、キャリア・メンタリングが当たり前の世界にしたいです。私たちは「タニモク」を通して入社時のオンボーディングから、事業部内、社員合宿、役職間――あらゆる現場で「タニモク」による「キャリアア・メンタリング」が実施され、メンバーが自分自身の未来を存分に語りあうような世界観を目指しています。
過去や現在の会話だけでなく、「未来の会話」を増やすこと。
「タニモク」を通じたキャリア・メンタリングの実証は、今後も続いていきます。法人の人事のご担当者さまが参加する【「タニモク」ラボ】も立ち上げ、この世界観の実現に向けてプロジェクトも推進している最中です。もし、このキャリア・メンタリングの世界観に共感し、ともにプログラムを開発したい、効果を実証していきたいという方はぜひ、「タニモク」ラボにもご参加ください。