【活用事例】変化も波も乗り越えられる関係づくり『寮生活を送る高校生×「タニモク」』
こんにちは!「タニモク」編集部です。
他人に自分の活かし方を見つけてもらえる「タニモク」は、年齢や肩書きを問わず、利害関係のない人同士であれば誰でもフラットに実施できるワークショップです。
noteでは「タニモク」を実施された方にインタビューを行い、「タニモク」のアレンジ方法や得られた効果などをご紹介しています。
今回お話を伺ったのは、先日の『「タニモク」ファンミーティング』にも登壇いただいた、島根県立隠岐島前高等学校の「タニモク」グループ、BEYONDの皆さんです。
実施団体と参加者
実施のきっかけ
ーはじめに、「タニモク」を実施することになったきっかけを教えてください。
小谷さん:僕がつぶやいた話題から発展しました。BEYONDは、昨年度私が寮の学生向けに行ったゼミのメンバーです。たまたまインターネットで「タニモク」を見つけ、ゼミのコミュニケーションツールであるSlackで「やりたいな」と言ったところ、T・Aさんが行動に移してくれて、実現に至りました。
T・Aさん:海士町に移住された方が「タニモク」プロジェクトリーダーの三石さんとお知り合いで、「タニモク」の話を伝えたところ、三石さんに繋げてくださったんです。そこから話が進み、2021年の1月にオンラインで実施していただきました。
小谷さん:最初の「タニモク」に参加したゼミのメンバーは6人で、3人ずつ2グループに分かれました。その後も継続するかしないかは各グループに任せて、そのうちの1つのグループがBEYONDとして現在も活動しています。
実施目的
ー「タニモク」を実施する目的を一言ずつお願いします。
T・Aさん:一言で表すと、「自分が持っていない視点をもらうため」というのが大きくあります。自分が思っていることを行動に移すことは割と出来るんですが、自分が思ってもみなかったことをやろうとするのは難しくて。「タニモク」は、それをみんなで出来るのがいいですね。
H・Iさん:毎週毎週、メンバーから無責任で大胆な提案をもらって、それに挑戦してみたときに、「自分はこんなことが出来るんだ」という発見があること、知らなかった自分を見つけられることが嬉しいです。
T・Kさん:2人が言っているように、「自分が普段考えないようなお題が飛んでくるのがおもしろい」というのが1つ。それから、細かい単位で色んな人からフィードバックをもらったり壁打ちをしてもらったりすることで、自分を見返す機会が増えて、それが「自分の成長につながっている実感になる」というのが1つです。最初はその場の流れで始めて「続けてみるか」という感覚だったんですが、その2つがあるから今も継続しています。
小谷さん:僕は完全にノリですね。「想像を超えたい」という想いはあったんですが、自分の目標や人生に関わることを高校生に定めてもらって、それを必死に追うという経験はなかなかないな、と思いまして。高校生に定められた目標で「人生変わっちゃいました」となったらおもしろそうだな、というので始めた感覚です。
実際の「タニモク」では、高校生から「そんなこと考えたことがなかった」というアイデアや提案をもらったり、「お前はその程度でいいのかよ」と突きつけられたりするので、すごくありがたい刺激だなと思います。
実施内容
ーBEYONDでは【1年間「タニモク」】と【1週間「タニモク」】の2種類の「タニモク」をしていると伺いました。
T・Kさん:【1年間「タニモク」】は、1月に三石さんに開いていただいた通常の「タニモク」のことです。1年間の目標を決めて、それをこのチームで続けていこうという話になりました。情報の共有は基本的にSlackを使用しています。やり取りの頻度は不定期ですが、7のつく日(7日・17日・27日)には必ず進捗報告をすることになっています。
【1年間「タニモク」】を実施した2、3カ月後から、【1週間「タニモク」】を始めました。
ー【1週間「タニモク」】に発展した経緯を聞かせてください。
H・Iさん:私が提案しました。【1年間「タニモク」】の目標達成を考えたときに、「期間が長い」「実感がない」「忘れてしまう」という感覚があったんです。そこで、『もっと短い間隔で「タニモク」をしてみたらやっている実感がわくのでは』と考えてやってみたところ、とても楽しかったので、そのまま継続しています。
小谷さん:もともと、H・Iさんが1年間の目標に『苦手なことに挑戦する』と掲げていたんですが、"苦手なこと"がわからないということで、他のメンバーから「こういうことをやってみたら」というフィードバックを1週間単位で受けていたんです。その中で、こちらだけが一方的にボールを投げるのは違うよね、という話になって。そこからお互いにボールを投げ合おうと、全員で【1週間「タニモク」】をやることになりました。
ー【1週間「タニモク」】はどのような方法で行っているんですか?
小谷さん:ワークショップ形式ではなく、毎週日曜日に"お題設定者"が設定したお題(目標)を、各自が行動に移す、という方法をとってます。お題の設定者は週ごとのローテーションです。あとはそれぞれがSlack上で報告をしています。
T・Kさん:1日ごとや遅くとも次の週など、細かいスケジュールでコミュニケーションをとっています。
ー【1年間「タニモク」】の目標の中から【1週間「タニモク」】の目標をたてているのでしょうか?
小谷さん:【1週間「タニモク」】では、基本的に【1年間「タニモク」】とは全く関係のない目標をたてています。「タニモク」のコンセプトである「大胆に、無責任に」を軸に置きながら、各々がねらいや意図を込めてお題を設定しています。最初は一人ひとりに別々のお題が出ていたんですが、いつからか共通のお題になり、それを全員で追うようになりました。
ー印象深かったお題は何ですか?
T・Kさん:僕が印象深かったのは、ゴールデンウィーク頃に出された『寮内で寮長以上の存在を発揮して、結果を出す』というお題です。前期、副寮長をやっていたところに小谷さんからそのお題がきて、1週間で寮のホームページの基礎をつくりました。友達と2人で文章を書いて、写真を撮って、レイアウト決めて…とつくっていき、寮の人たちに「寮のホームページができました」と発表したんです。「1週間でも、こんなにやればすぐに結果が出るんだ」という実感が大きかったのと、ノリで始めたものが途中すごく楽しくて、印象に残っています。
小谷さん:僕は『外来語禁止』というのが一番印象に残っています。普段から「アジェンダ」などの横文字ばかり使っていて、いかに自分がカタカナ、英語にまみれているのかを再認識させられる時間でした。苦労どころか途中で「無理です(笑)」となって、「申し訳ないけど許してくれ」と途中から解除してもらいました。
H・Iさん:「腕立てバービージャンプ」や「毎日5キロ走る」などの、運動系のお題が印象に残っています。結果的には運動系は全部達成できなかったんですが、日常的に運動をしようと思ってもしないので、「タニモク」で「毎日これをしないと」と気持ちが入ってする運動には毎日違う発見がありました。
例えば、5キロを走っている最中、最初はすごく「長い」「苦しい」と感じていたんですけど、途中から「5キロをいかに苦しいと思わずに走りきるか」という新しい思考に持っていけたのがよかったです。
「1週間毎日やらないと」という指針があることで、毎日同じことを繰り返すのではなくて、考え方が変化したり行動を変えたりできるのが運動系のおもしろさだと思いました。
T・Aさん:私は、H・Iさんがまだ1人でやっていたときの「実際の占いを参考にしながら、1日1人を占う」というお題が印象的です。H・Iさんが毎日がんばっている姿や行動が日々改善されていく様子を見て、その姿勢がいいなと思いましたし、今でも私の原動力になるエピソードになっています。
開催時・開催後に意識したポイント
ーそれぞれの「タニモク」で、意識していることはありますか?
T・Kさん:【1年間「タニモク」】では、1月に決めた目標を1年間かけて追っています。7のつく日(7日・17日・27日)にSlackで進捗を報告するルールになっていて、「どのような変化が起きたのか」や「どれくらい達成しているのか」などを共有しています。
小谷さん:基本的にやり取りはSlackで行っていますが、月に1回くらいはオンライン、できればオフラインで、ご飯を食べながら集まる時間を設けています。Slackの中には「7の日」「T・A」「T・K」などのチャンネルがあり、それぞれのチャンネルで自分のやったことをどんどん書いていきます。それ以外にも思いつきで「こんなことやりたいよね」と発言することもありますし、【1年間「タニモク」】の追い方は人それぞれ違う印象ですね。
ー皆さん、【1年間「タニモク」】にはどのような想いで取り組まれているのでしょうか?
T・Aさん:私は「日常から学ぶ」「決断を早くする」という2つの目標をたてました。全く具体的ではないのですが、決めた当時も今も、常に頭の片隅に置いているという感覚です。
小谷さん:【1年間「タニモク」】の目標に関しては、3人から色々と提案をしてもらい、その要素もふまえつつ、自分で「こういうことをやりたい」「こういうことができたらいいな」というものに決めたんです。これまでプライベートで1年間単位で「これを目標に掲げて、これを具体的にやりきる」ということがなかったので、新鮮でした。達成度合いで言うと100%は厳しそうなんですが、目標を書き出して、"誰かに見られながら"、"発言しながら"進めていくというのは、価値があることだと改めて思っています。
T・Kさん:【1年間「タニモク」】の目標は、割とタスクというか、「これを達成する」というものを結構具体的に考えたので、常に頭の中にある感じです。ずっと目標を意識し続けていたんですが、ここまでの約1年で最初に設定したものに少しずつ変化が加わってもいて、それがおもしろいと思いますね。
H・Iさん:みんなの意見をふまえて『苦手なことに挑戦する』という目標に決めたんですが、やってみたら意外と苦手じゃないこともあって、途中から『苦手なことに挑戦する』という表現は何か違うな、と感じました。今は最初に決めた【1年間「タニモク」】の目標がない状態で、1年間で目標がコロコロ変わったなあという印象です。
ー【1週間「タニモク」】の、意識や行動の変化についてはいかがですか?
T・Aさん:「すぐにやる」ということが身に付いたと思います。日曜日に目標が投げられるんですが、「今の時点でやるとしたらどうしよう」と考えたり、実際に行動する時もあったりと、【1週間「タニモク」】をやっていなかった時よりも、意識や行動の早さが変わったと感じています。
H・Iさん:今の自分を、時間としても感覚としてもわかるようになったと思います。今の自分の状態と今週のスケジュールをすり合わせて、どのくらいの力で【1週間「タニモク」】をしたらいいのかが、続ける中でわかるようになりました。
小谷さん:「タニモク」には"他のメンバーにプレゼントする"と"自分がやる"の2つの視点があるんですが、自分がやるということに関しては「忙しいときや余裕がないときにどれだけ出来るか」が試される要素なので、あまり波をつくらないように、というのは割と意識しています。
自分がお題設定者になってみんなに目標設定をするときは、「今まで経験したことがない」とか「想像したことがない」など、"それはちょっと無理でしょうと思っても、やってみたらできた"というような、ちょっと無理だよを超えていくお題を意識してきたと思います。
T・Kさん:締切の重要性を実感しています。1週間という区切りがあるので、意識もしますし、行動にも移しやすいです。変化としては、単純にキャパシティが増えました。メンバーから「タニモク」をプレゼントしてもらうことで、自分がどれだけ今持っている素材だけで物事を考えていたのかや、もっとおもしろいことを考えられるのに、というところに気付けたのが大きかったです。
小谷さん:ここの高校生3人は忙しい大人からしても「忙しいな」と思うくらい、色々なことに挑戦しているんです。そこにさらに【1週間「タニモク」】で色んなお題、しかも無茶難題が飛んでくるのを、がんばってやっているというのは本当にすごいですし、「キャパシティが広がるのも当然だな」と、今T・Kさんの話を聞いていて思いました。
「タニモク」で得られた効果
ー「タニモク」で得たものを一言で表現するとしたら、いかがでしょうか。
小谷さん:僕は『青春』の一言に尽きますね。高校生と一緒にやらせてもらうというのもそうですし、若さをもらいながら思い出づくりをさせてもらっている感覚です。
T・Aさん:Slackで結構な頻度で報告もしますし、他の人にはあえて言わないことも書いているので、見られるということに対して「かっこよくありたい」と強く思えるようになりました。
T・Kさん:素直になりました。こんなにも自分のできることとできないことを人に共有して、みんなから返信が返ってくるということが初めてだったので、それらを通して「今は調子が悪くて何もできないです」と言えるようになったり、人から「こうした方がいいんじゃない?」と言われたことを素直に受け入れられるようになったりしたのが、「タニモク」で得たことだと思います。
H・Iさん:同じく、「素直になったな」と思いますし、ダメな自分をおもしろがれるようになったと思います。
今後について
ー日々を味わってここまでやってこられたというのが伝わってきました。約1年前に「タニモク」を始めたとき、このような1年後を想像していましたか?
小谷さん:「タニモク」をやっているんだろうなとは思っていましたが、三石さんに報告をして、そこからファンミーティングに参加させてもらったり、こうやって取材をしていただいたり、というところまでは想像していませんでした。
T・Kさん:「タニモク」をやったからかはわからないんですが、去年よりも1年間がちゃんと1年間だったという感覚はありますね。1週間や7の日で振り返りをするので、1日や1週間をしっかりと過ごしていました。これまでは割と「あっという間の1年だったねー」と思っていたのが、今年はそうでもない。「ちゃんと1年間やりました!」という印象です。
ー「タニモク」を始めてからもうすぐ1年を迎えるにあたって、今どんなお気持ちですか?
T・Kさん:実は今、チームとしてはとても落ち込んでいる時期で、【1週間「タニモク」】もストップしている状態なんです。ただ、この後どうしていこうと考えたときに、やっぱり【1週間「タニモク」】があった方がいいと思いました。最近1回離れてみたからこそわかったんですが、もはや自分のサイクルをつくる一部になりかけているということに気付いてびっくりしました。
もうすぐ1年が終わるというときに、この「タニモク」をもうちょっと続けていたいなと思っていて。「まだ学べることがある」というのと、去年と比べてこの1年で変わったこともたくさんあったので、12月も活動を続けて、「タニモク」をやっていてよかったと思える1年にしたいなと思います。
小谷さん:1カ月くらい前に、「ちょっと一時的に抜けます」という話をさせてもらったんです。このチームにはとてもレジリエンスがあって、調子がいい時もあれば悪いときもあるんですが、きちんと「調子が悪い」というのを認識しているし、普通に「今ちょっと無理です」と言える関係が素晴らしいんですよ。
僕は「タニモク」を最初から結構熱量を込めてやってきて、波が下がってきたときも力を入れてやっていたんですが、そこすらも手放したときに、高校生3人がどういう風に動いて、どう活動をしていって、どのような新しい展開を見せるのかを見たい、というのが理由の1つです。それから、僕がいない方がもっとよりよいコミュニティになる可能性がある、というのが2つ目の理由で、今はあえて外から傍観しているという感じです。これからどうなるのかなとワクワクしています。
H・Iさん:1年という感じがしないです、まだ。1月にやったときは、「よし、やるぞ!」というより「なんかやってみよう」という気持ちだったんですが、そこからエンジンがかかって今があります。立場や場所が変わっても続けていることができて嬉しいですし、今はチームとして止まっているけれど、今日こうして振り返ったときに、やっぱり楽しかったなと思いました。
もう少しで1年だし、これからどうなるかはわからないんですが、楽しさやワクワクをこの4人で11カ月間追求できて、改めていいチームだなと感じます。
T・Aさん:本音を言うと、今チームとして動けていない状況にたくさんのモヤモヤがあります。小谷さんが一時的に抜けて新しい形ができることが、自分にとってもチームにとってもいいことなんだろうと理解はしつつも、まだそこにエネルギーが向いていなくて、気持ちが止まってしまっている状態です。
ただ、自分がやりたくないことを提案してもらうのって、普通は拒否反応が出ることもあると思うんですが、約1年間「タニモク」でそれを受け入れるということをしてきて、知らないことややってみたことがないことに対しての、自分のマインドが整ったという実感はあります。「タニモク」以外の場面でも色んなことに飛び込めるようになったので、今回もこのタイミングが一皮剥けるところなんだろうな、という思いです。
担当者コメント
ー印象的なお話をありがとうございました。最後に、このnoteを読んでいる方に向けてメッセージをお願いします。
小谷さん:「タニモク」は探究のしがいがあるワークショップです。「チームをどうやってつくっていくのか」もそうですし、「タスクをどうやってこなしていくか」「ビジョン・目標に対してどのような行動に落としていくか」など、仕事のスキル的な面も身につくし、それをおもしろおかしくやれるという面でも、優れたコンテンツだと思います。
それと同時に、今回気付かせてもらったのが、「誰とやるか」も非常に大事だということです。ランダム性も大事ではあるけれど、「一緒にやりたいな」と思える人とやるほうが個人的には好きです。
H・Iさん:おすすめします。シンプルにその一言に尽きます。
T・Aさん:私たちは「タニモク」のスタンダードなやり方を参考にしながら、自分たちなりに考えて【1週間「タニモク」】も取り入れてきました。私たちの事例をやってみたいと思う方や参考にしたいという方もいると思うんですが、"自分たちなりに常に変えていく"というのをチームでやれたらいいのかなと思います。
T・Kさん:僕たちは1週間という単位で割と頻度が多かったというのもあるんですが、「チームワークとは何か」を机の上で考えるよりも、メンバーとコミュニケーションをとっていく中で色んな気付きがたくさんありました。なので、考える前にまずは楽しんでやってみてほしいと思います。
「タニモク」編集部より
島根県立隠岐島前高等学校のBEYONDの皆さん、お話しいただきありがとうございました!
1年間の目標を追い続ける工夫をされているだけでなく、1週間単位でさまざまなことに挑戦されている皆さん。波や変化を受け入れながら約1年間活動を継続されたお話を伺う中で、心をオープンにできる関係性や、チームの強い絆が伝わってきました。
この記事が、「定期的な振り返りの機会をつくりたい」「安心できるコミュニティがほしい」という方の参考になれば嬉しいです。