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【活用事例】人とのつながりを活かして、新たな価値を生み出したい。地方銀行のビジネスコンテスト×「タニモク」

「タニモク」は3~4人1組で目標をたてあうことで、自分の活かし方をみつけるワークショップです。
イベント ▶マニュアル ▶目次 ▶活用事例

こんにちは!「タニモク」編集部です。
noteでは「タニモク」を主催された方々にインタビューを行い、活用方法などをご紹介しています。

今回はお話を伺ったのは、秋田銀行 地域価値共創部の工藤槙さん。
同行が主催するビジネスコンテストのプレイベントとして「タニモク」を実施したという工藤さんに、開催への想いや今後の展望についてお話しいただきました。

工藤写真

実施企業と参加者

◆企業名:株式会社 秋田銀行
◆実施時期:2022年1月29日(土) 13:00~17:30
  Zoomによるオンライン開催
◆構成
 ●前半:神戸大学大学院経営学研究科 吉田満梨准教授による講演
「今、注目の起業家思考法『エフェクチュエーション』とは?」
 ●後半:「タニモク」ワークショップ
◆実施頻度:1回のみ
◆活用シーン:【〈あきぎん〉ビジネスコンテスト 2021-2022】のプレイベントとして
◆対象者:【〈あきぎん〉ビジネスコンテスト 2021-2022】の応募者または応募予定者、起業家、社会人、大学生等
◆参加人数:約30名



「タニモク」の実施に至るまでの経緯

ーはじめに、外部に向けて「タニモク」のワークショップを実施することになった経緯を聞かせてください。

工藤さん:「タニモク」のワークショップは、【〈あきぎん〉ビジネスコンテスト 2021-2022】のプレイベントとして実施しました。秋田銀行は2019年度から2021年度までの中期経営計画の中で「起業創業支援」を重点プロジェクトに掲げており、今回のビジネスコンテストにおいても、「地域経済を将来牽引していくような起業家を発掘し、育成すること」を目的に開催しています。

今年度で5回目となるコンテストの応募総数は年々増加していて、認知度は徐々に高まっていると感じています。一方で、過去のコンテストでは、約2カ月間の募集期間にコンテンツづくりやイベント企画をしてこなかったという課題もありました。

そこで、今回は【〈あきぎん〉ビジネスコンテスト】のプレイベントと、私がコミュニティマネージャーをしている起業家コミュニティのコンテンツイベントとして、「タニモク」のワークショップを実施することにしました。


実施目的

ービジネスコンテストのプレイベント、コミュニティのコンテンツイベントとして、「タニモク」を選んだ理由をお聞かせいただけますか。

工藤さん:「思考のアウトプットやフィードバックのきっかけづくり」「起業家コミュニティの活性化」が目的です。私自身、2021年秋にプライベートでオンライン「タニモク」を経験して、とてもよい仕組みと思っていたので、起業家たちがビジネスアイデアを持って応募するにあたり、自分の頭の中にあるアイデアを他人に話したり、それについてフィードバックをもらったりする機会があればよいのでは、と考えました。

ーイベントは2部構成で、前半はエフェクチュエーション(※)の講演をされています。エフェクチュエーションと「タニモク」を組み合わせた背景を教えてください。

※エフェクチュエーション:インド人経営者サラス・サラスバシー氏が提唱した理論で、優れた起業家に共通する意思決定プロセスや思考を体系化したもの

工藤さん:以前から、起業家の思考法や見方、感じ方は、銀行員や一般的なサラリーマンの方にもインストールされるといいなと考えていました。そこで、以前からお付き合いがあり、今回「タニモク」の進行にもご協力いただいた一般社団法人チームババヘラ(秋田県の関係人口を増やすプロボノ団体)に相談したところ、エフェクチュエーションを学ぶことで起業家の思考法を習得し、「タニモク」のワークショップでアフターケアができたら最高ですね、という話になり、それが実現した形です。



実施内容

●タイムテーブルは通常の「タニモク」と同様
●グループは3人1組で構成
●テーマは『他人の視点でビジネスアイデアを磨く』に設定

ー実施にあたり、通常の「タニモク」をアレンジした部分はありますか。

工藤さん:アレンジは多少行っています。ビジネスコンテストのプレイベントという特性を踏まえて、テーマは「目標」をたてるという形ではなく、『他人の視点でビジネスアイデアを磨く』に設定し、主人公(目標をたててもらう人)の描いた「手中の鳥」の絵を見ながら、他の人がビジネスアイデアを考えるようにしました。また、全員が話し終わった後に、3人のビジネスアイデアを統合したらどんな「クレイジーキルト」が生まれるかチームで話し合う時間も設けました。

進行は、一般社団法人チームババヘラの3名にご協力いただきました。チームババヘラにはこれまでもオンラインイベントを開催していただいていますし、「タニモク」のファシリテーション経験者もいたので、ファシリテーションを含めてお任せしたところ、スムーズに進行することができました。

実際のワークには私もグループの一員として参加していたので、チームババヘラと、イベントの前半でご講演いただいた吉田満梨先生に各グループのサポートをしていただきました。

ーグループ内ではどのようなお話がありましたか。

工藤さん:起業予定者から、「秋田の米粉を使った商品を作ってきたい」というアイデアがありました。SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンスの頭文字)の観点から「余っているものを活かした商品を作りたい」という事業案に対して、私たちはそもそもなぜ米粉なのか、また、そこに至るまでの経緯を深掘りしていきました。

そうして話を聞いていくと、その方は米粉というより、「地方での多様性のないこと」への想いが強いことがわかってきました。「地方でも若い人が主体的に働ける仕組み」や、「こういった提案を気軽にできる仕事環境」を作っていきたいというビジョンが明確になってきました。

ー工藤さんはどのようなお話をされたのでしょうか。

工藤さん:私が所属しているいくつかのコミュニティを絵に描いて、自分に集まってくるさまざまな情報を組み立てたりコーディネートしたりすることで、新しい事業ができるのではないか、何か新しい展開が見られるのではないか、という話をしました。

そこで返ってきたのは「私だったら●●なコミュニティビジネスをやる」「ビジネススクールのようなものを開設する」というアイデアでした。日頃、コミュニティビジネスを考えたことがなかったので、そのような選択肢もあることは大きな気付きでしたね。とても楽しかったです。



「タニモク」で得られた効果

ー工藤さんから見て、「タニモク」のワークショップに参加された方の満足度を数値として表すとしたら、いかがですか。

工藤さん:最高値が100だとしたら、120になるのでは、と感じています。アンケートでも前向きな意見を多くいただき、参加者の満足度は非常に高かったと思います。

また、今回は、ビジネスコンテストへの参加を検討している方以外に、当行職員も自己啓発のため、プライベートで10名程参加しています。
日頃「これでいいのかな」と思っていることを心理的安全性が保たれる場で話すことで、「自分が考えていることって他人から見ると結構すごいことなんだ」「自分では強みだと思っていなかったことが実は強みだったんだ」と、自分自身のことを認識できたことが大きかったのではないかと感じています。

ー今回、ビジネスコンテストの枠組みの中でエフェクチュエーションや「タニモク」を実施されて、得られた効果はどのような点にあるでしょうか。

工藤さん:今回の参加者のボリュームゾーンは20・30代ですが、上は50・60代、下は大学生と、幅広い世代に参加いただきました。学生、サラリーマン、銀行員と、普段あまり関わりのないような方々が、オンラインを介して交わったからこそ生まれた価値があったのではないかと思います。

また、私の同期も参加していたのですが、「タニモク」後は、「このアイデアどうなんだろう、ちょっと相談させて」と気軽に声をかけてくるようになりました。

ー工藤さんご自身は、いかがですか。

工藤さん:先日、チームババヘラのメンバーと話をしているときに、「●●さんのそういうところがすごいですよね」と伝えたら、その方の話に勢いが増して、会話が盛り上がったことがありました。「タニモク」で「その人のいいところを見つける」「それを本人にフィードバックする」ということが大切だと学んで、それを自然と行えたことがおもしろかったですね。自分自身の姿勢が変わってきているな、と感じました。



開催時に意識したポイント

ー開催にあたり、告知や事前の準備で意識したことはありますか。

工藤さん:コミュニティのSNSと当行ホームページで開催案内をしました。併せて、「楽しいワークショップですので、ぜひ参加してください」と銀行内にも働きかけたところ、当行職員からの自主的な申し込みが思いのほか多かったのが驚きでした。

グループのメンバーは、当行職員同士や同じ企業のコミュニティにいる人が固まらないように意識して、なるべく違う所属の方が関われるように工夫しました。



参加者の声

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●タニモクを使って銀行内ベンチャーを構想し、ビジネスコンテストに出してみたいです!

●タニモクでこんな風にアドバイスしたり意見をもらったりできるんですね。今準備している事業につながるヒントをいただけました!

工藤さん:「対話することが重要だ」という感想が多かったですね。「対話から生まれるものもあるから、何でも一人で考えて進めるのではなくて、どんどん人に話をすることが大切だ」と気付かれた方が多いようです。

また、『他人に色々話してもらうことで、自分では気付かなかった強みに気付けることが「タニモク」の価値ですね』という話もありました。



つながりや相互支援の仕組みづくり

ー先ほど、「タニモク」開催の目的に、「起業家コミュニティのコンテンツイベント」というお話もありました。今回の「タニモク」に参加された方は、「あきぎん STARTUP Lab.コミュニティ」に参加することができるんですね。

工藤さん:地域価値共創部内で起業・創業支援担当は私1人なのですが、起業家に対して営業店と一緒にファイナンスや創業支援、ビジネスマッチングや起業手続き紹介を、単独で行うことに限界を感じていました。そこで、起業家同士の相互支援や情報共有ができるシステムがつくれないかとチームババヘラに相談したところ、「あきぎん STARTUP Lab.コミュニティ」の創設が実現しました。昨年、チームババヘラと開催したオンラインワークショップに参加した約30名が起点となり、現在164名にまで増えました。ただ、やみくもに人数を増やせばいいというものではなく、中身が重要だと考えていますので、参加者の心理的安全性を確保するためにも、今はコミュニティマネージャーの私か、チームババヘラからの紹介がコミュニティ参加の条件となっています。今回の「タニモク」に参加された方にも、こちらのコミュニティ参加をご案内しました。

ーコミュニティでは実際にどのような活動をされているのでしょうか。

工藤さん:経済メディアや雑誌などから得た情報を、「この記事とこの情報だったらこの人かな」と、常にギブを意識して共有しています。Aさんを想定した記事を共有したらそれに反応する方が何人もいたり、「じゃあこれを一緒に別チャネルでやりませんか」という動きが出てきたりすることもあります。

コミュニティを通じて、いかに「支援のエコシステムを作っていくか」「地方で新しい挑戦をする方々を可視化していくか」が大切だと思っていて、自分の人脈も全てそこに入れることで、人脈のシェアのようなこともできればと考えています。その最初のコンテンツが、今回の「タニモク」のワークショップでした。

ー相互支援や情報共有ができる場があるというのは、参加者の方々にも心強いですね。今後はどのような活動を考えていらっしゃいますか。

工藤さん:今回の「タニモク」のテーマが「自分が●●さんだったらこういう事業プランにする」でしたので、「その人になりきって事業プランを出す」とか「こういう事業がいいんじゃないか」という提案で終わっています。その後について、コミュニティでも色々とフォローしていきたいと思っています。

また、「タニモク」はマニュアルもしっかりと整備されていることから、自分たちで開催することもできるので、今後はメンバーが「タニモク」を自主的に行えるような展開を目指していきたいと考えています。



担当者コメント

ー改めて、今回「タニモク」を開催された感想をお聞かせください。

工藤さん:秋田県で「ビジネスコンテストをやります」と言っても、やはりまだまだ応募数が少ない状況です。過去4年間の様子を見ても、その手前段階でいかに人を集めて、その方々を導きながらコンテストに持っていける仕組みを作れるかが、重要だと考えています。

また、ビジネスコンテストという特性上、当然落選される方も出てくるのですが、そこで終わりにするのではなく、その後に参加者同士で「タニモク」をやることで、もしかしたら相乗効果やさまざまな仕掛けが生まれてくることもあると思います。そういった意味で、ビジネスコンテストの前後がとても重要だと感じました。

また、参加者同士の掛け合わせや組み合わせの工夫も、当行が間に入ってできることの1つではないかと実感しました。お金ではなく、顧客のチャネルに価値がありますし、それをどう発展させられるかは、銀行員が新しい考え方や物の見方をインストールできるかにかかっているのではないかと考えています。

ー今後、社内で「タニモク」を実施することがあれば、どのようなシーンで活用したいですか。

工藤さん:エフェクチュエーションや「タニモク」のワークショップの考え方、見方というのは、起業・創業というくくりだけではなく、人材育成などさまざまな場面への発展性があると感じています。

地方銀行のコンサルティング営業では、お客様との対話もそうですが、銀行内での対話がもっと必要だと思っています。まだ具体的な場面は想定できていないのですが、「若手と中堅」「本部と営業店」など、普段なかなか交わらない点を結ぶことで相互理解も深まりますし、新たな発見があるかもしれません。色々な部署の専門知識を持っている人が「タニモク」を介して対話することで、 AとBをつなげてCができるとか、地方銀行の新しい働き方とか、そういったものに発展していければいいなと思います。



「タニモク」編集部より

ビジネスコンテストというと、「いいアイデアが出ることが一番の価値だ」「より具体的な案が出てくるのがよい」とされることも多いのですが、今回のお話では、「対話をすることの重要性」「相乗効果の可能性」「つながる仕組み」などのキーワードが出てくることが印象的でした。

自分が持っている資源やスキル、人脈を出し合うことで、つながる関係や生まれる価値もある。そんな、「タニモク」の可能性を改めて認識できるお話でした。参加いただいた方も、そのような刺激を受けられたのではないかと思います。

工藤さん、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。



「タニモク」の台本や映写資料は、公式ホームページよりすべて無料でダウンロードできます。
友人同士や組織で「タニモク」を実施したいという方は、マニュアルをチェックしてみてください。
実際に「タニモク」を体験した後は、「#タニモク」をつけて感想を発信していただけたら嬉しいです。みなさんの投稿も楽しみにしています!