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【活用事例】立場の壁を越え、応援し合う仲間に『全社合宿×「タニモク」』

「タニモク」は3~4人1組で目標をたてあうことで、自分の活かし方をみつけるワークショップです。
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こんにちは!「タニモク」編集部です。
noteでは、「タニモク」をさまざまな企業や学校でご活用いただくために、「タニモク」を実施した団体にインタビューを行い、活用シーンや得られた効果などをご紹介しています。

今回ご紹介するのは、年末に行われた「全社合宿」での活用事例です。英治出版株式会社の鈴木さんと山下さんに、実施への想いや工夫したポイントを伺いました。

鈴木さん
山下さん

実施企業と参加者

◆企業名:英治出版株式会社
◆実施時期:2022年12月(2022年の最終営業日)
◆開催場所:「古民家スタジオ・イシワタリ」にてオフライン開催
◆活用シーン:全社合宿
◆対象者:全社員、インターン生
◆参加人数:20名弱


実施のきっかけ

ー初めに、全社合宿で「タニモク」を実施することになった経緯を教えてください。

山下さん:リモートワークやコロナ禍で、全員が顔を合わせる機会が減っていました。リモートワークには個々がマインドフルに働けるよさもありますが、実際に集まることで気づけることやわかりあえることがあると考えていたんです。そこで、年末に全員で合宿をすると決めて、10月頃から動き出しました。

合宿の内容を考えていく中で、「1年の振り返りも大事だけれど、大切なのは振り返ったことを未来に向けてどうつむぐか」だと鈴木さんと話していたんです。そのためには会話をするだけでなく、ツールやフレームワークを使うことも有効ではないか、と考えたときに、思いついたのが「タニモク」でした。

ー山下さんは以前から「タニモク」をご存知だったのでしょうか?
山下さん:はい。EIJI PRESS Base(英治出版と共感し合う方々が参加する、会員制シェア・スペース)で2019年に開催された、【4社合同「タニモク」会】に参加したことがあります。そのご縁もあり、EIJI PRESS Baseのメンバーでもあり、「タニモク」アンバサダーで合同「タニモク」会のファシリテーターも務められた日比谷尚武さんに、合宿企画のブレスト段階から入っていただきました。日比谷さんと改めて「タニモク」の効果や自社のニーズを話す中で、実施するイメージがわき、期待値が上がっていきましたね。


実施内容

ー今回は全社合宿での実施ということですが、当日の構成を教えていただけますか?

山下さん:古民家を終日貸し切り、午前に「1年の振り返り」ワーク、午後に「タニモク」を実施しました。その後は場所を移しての懇親会です。

午前:1年の振り返りワーク

山下さん:事前準備として、鈴木さんと私で英治出版の年表のようなものを作りました。1年の間に英治出版で起きた出来事や、出版物を1枚1カ月で整理したものです。

鈴木さん:全員に付箋を30枚ほど配り、「付箋には当時の印象や感情を書いてみてください」「使い切ってくださいね」とお伝えしました。

山下さん:付箋を貼り終えたら、私たちが進行しながら、付箋の記入者にその内容や意図を説明してもらったり、それに対して他の人から追加質問や補足をもらったりして、ひと月ごとに振り返りを行っていきました。

鈴木さん:振り返りワークで特に大切にしたのは、「感情にフォーカスすること」です。出版社なので「何部売れた」「著者が来日した」などの象徴的な出来事はたくさんあるのですが、そこに感情が乗ることで、お互いの深いところまで理解できるのでは、と考えました。

だからこそ、事実はあらかじめ年表で出してしまい、それに対してそれぞれが嬉しかったことや悔しかったこと、感謝の気持ちなどを言葉にして1年を振り返れるようにしたーーというのは、設計で重視したことです。

ー組織での振り返りは「数字がこうだったから次はこうしよう」といった、「コト」の振り返りとアクションに注目されがちな気がします。改めて、「感情」にフォーカスした理由やそれによる効果を教えていただけますか。

山下さん:英治出版ではこれまで「組織の中での感情や温度、熱、エネルギーが大切」という趣旨の本を出版してきました。とは言え、リモートワークでは感情をなかなか出しづらいと思うので、日常生活から離れた場所だからこそ「ありがとう」とか「悔しかった」という気持ちを言葉に出してほしいと考えました。前半の振り返りワークで少しずつ感情を言葉にすることで、後半の「タニモク」でより感情を出しやすくなる状況をつくりたいという意図です。

それから、肩書きや職務では多少の上下関係が発生してしまいますが、互いの感情がわかることで、オフィスに戻っても応援し、支え合うことができる。感情を言葉にすることが、本当の意味でメンバー同士がつながるために不可欠だと思いました。

鈴木さん:出来事のまとめた年表は運営側で準備できますが、個々の感情は私たちにはわかりません。出来事はあくまで呼び水。「あの時こういうことを思っていたな」と素直に表現してもらいたいと思っていました。午前中に感情を言葉にしてもらったことが、午後の「タニモク」にも活きたと感じています。


午後:「タニモク」

・ファシリテーターは日比谷さん
・3~4人1組でグループを編成
・タイムテーブルは通常の「タニモク」と同様(約2時間)

ー事前に全員で振り返りを行うと出来事や思考の整理ができますし、その後の「タニモク」で想いを出しやすくなったり、引き続き内容を深めたりすることにつながりそうですね。「タニモク」のワークショップはどのように進めましたか?

鈴木さん:タイムテーブルは通常の「タニモク」と同じです。ファシリテーターを日比谷さんにお願いしたので、私たちも参加者として他のメンバーと一緒に「タニモク」を行うことができました。

ーお二人にも参加していただけて嬉しいです。「タニモク」のグループ分けはどのように行いましたか?

鈴木さん:日比谷さんから「普段あまり関わりのない人たちでグループを組むのもおすすめですよ」と聞いていたので、その点を意識しました。

ー3、4人でグループを組まれたとのことですが、4人グループの4人目の主人公が目標をたててもらっている間、3人グループの方々は何をされていたのでしょうか?

山下さん:私は3人のグループだったので、本来は4人グループを見学する予定だったんです。けれど1ターンでは話し足りなかったので、気づけば見学でなく「タニモク」2ターン目に突入していました。1ターン目で気づけなかったことが2ターン目で発見できたりと、「タニモク」を繰り返すことの価値を感じましたね。

ー鈴木さんのグループはいかがでしたか?

鈴木さん:私は4人グループだったのですが、3人グループの人が何人か来て、主人公へ向けたプレゼンテーションを聞いたり、突然プレゼンテーションに参加したりしていました。いわゆるドタ参加者のプレゼンテーションは、より大胆で無責任な目標が出てきて、これもまたよい刺激だなあと思いました。


開催時に工夫したポイント

ー合宿全体や「タニモク」のワークショップで、工夫したことはありますか?

鈴木さん:「一体感」と「みんなでここにいる」ということですね。まず開催場所についてですが、オフィスだと仕事モードになってしまうので、オフィスから離れることを意識しました。ただ、全員が参加できるようにそれぞれの事情も考慮して、鎌倉の古民家を1日貸し切りました。

それから、一体感が出るように、チェックインでは大広間で全員で円陣を組んだんですよ。「全員が靴を脱いで、座敷で輪になって集まったのがよかった」という感想をたくさんもらえて嬉しかったです。


「タニモク」を実施した感想

ー今回の「タニモク」の感想を、参加者側/運営側それぞれの観点で伺っていきたいと思います。まずは、参加者の立場ではいかがですか?

山下さん:印象的だったのは、「英治出版だからこうあるべき」という私も含めて全員が持っているであろう思い込みが、「タニモク」で少しずつ外れていったことです。同じ会社の人でも、それぞれの視点や感情がある。それらを率直に言葉にすることで、「実はこうなのかも」「なんだ、そう思っていたんだ」と思い込みが外れる経験がおもしろかったです。

「タニモク」では『もし私が山下さんだったら、コーヒーブレイクをBaseで取り入れる』と、その人らしさと意外性のある目標をいただきました。目標をもらうことで、自分の思い込みに気づけるんですよね。そして、目標が書かれた手書きの紙を手渡されると、存在を身近に感じられますし、そういう温かみのあるところが今回のようなオフライン開催のよいところだなと思いました。

鈴木さん:日比谷さんに「タニモク」ワークショップの説明や進行、タイムマネジメントなどを全てお任せできたのはとてもありがたかったです。私も一参加者として「タニモク」に集中することができました。そして私自身は「タニモク」初体験だったのですが、「これでよいのだろうか」という不安が一切なく、参加者として没入していました。

実際のワークでは私の「〇〇さんだったらこうする」というプレゼンに対して、主人公から「実はそう思っていたんだよね」という回答があり、本音をポロっと言える雰囲気のよさが「タニモク」にはあると感じました。1人の質問からいくらでも対話が広がるので、ちょっと話し足りない感じもありましたが、それが次につながるのだなと思いました。

ー運営側としてはいかがでしょう?

山下さん:撮影した写真を見返すと、特に「年代がバラバラ」のグループがとてもよい表情をしていたんです。「笑い」「神妙」「驚き」それぞれの表情が印象的で、今回の成果を物語っていると思いました。盛り上がる、深く考える、発見する、思い込みが外れる。これらが「タニモク」の魅力だなと改めて実感しています。

鈴木さん:お互いに相談事や弱みを出すことで「この人はこんなことに悩んでいたんだ」と理解し合える。そのうえで「どのような目標を提案すると主人公の応援になるか」を、みんなが真剣に、ときに無責任に考えていることが、ワークショップ中の表情からも合間の雑談からも感じられて嬉しかったです。

また、当日は欠席者が1名いたので、後日私と山下さんと他メンバー数名が集まり、その1名のために「タニモク」を実施しました。その場の雰囲気がとても温かく、主人公もとても喜んでくれました。ファシリテーターは私が担当したのですが、合宿で日比谷さんのファシリテーションを見ていたので、不安なく実施できましたね。


「タニモク」で得られた効果

ー「タニモク」を実施する前と比べて、社内に何か変化はありましたか?

山下さん:目に見えない変化もいろいろあると思いますが、わかりやすい例として、「タニモク」をきっかけに「IT・システム関連のことを何でも聞ける会」が開催されるようになりました。下田さんという編集者・プロデューサーがIT・システム関連を兼務しているのですが、彼が忙しいときは他のメンバーは声をかけづらかったり、下田さん自身も英治出版のITリテラシーに課題を感じていることが「タニモク」を通じて明らかになっていきました。

そして、昨年の最終営業日に「タニモク」を実施して、年明けすぐに下田さんから前述の会の呼びかけがありました。「タニモク」をきっかけに実際のアクションにつながっているのはとても嬉しいです。

鈴木さん:英治出版では例年、決算にあわせて2〜3月に全社で収穫祭という振り返り会のようなものを行うのですが、「年末の合宿で十分に振り返りはできたから、未来に向けた対話をがっつりやりたいよね」という声があり、今年の収穫祭では振り返りは最小限でした。みんなの意識がぐっと未来に向いているからこその反応で、これも「タニモク」の効果なのかなと感じています。

それから、3月に社内で行った「タニモク」振り返り会に、普段はそのような対話型のイベントにあまり参加しないメンバーが積極的に参加してくれました。「タニモク」をきっかけに、その人の中で何かが変容したのかな、と嬉しく思っています。


担当者コメント

ー全体を通して感じたことや、今後の展望についてお聞かせください。

山下さん:目標やアイデアを出すって、まさに応援なんだなと思いました。日頃から英治出版は「著者を応援する」ことを大切にしていて応援モードが働きやすい土壌があったということもあり、「タニモク」との相性がよかったと改めて感じました。

興味があるのは、毎年実施するとどうなるのかということです。「タニモク」の新鮮味は薄れるけれどやるたびに発見があるのか。今年の年末も「タニモク」を実施するとしたら、どんなスパイスをかけていけるのか楽しみです。

鈴木さん:当日はもちろん、その後何度も『「タニモク」はよかった』と言ってもらえたので、メンバー一人一人に響いたことが純粋に幸せです。

それと、『「タニモク」で出てきたあの悩みはその後どうなったのか』『他人からの目標を受けて自分がどう変わっていったのか』を四半期とか半年に1度、共有したりサポートしたりできる体制がつくれるといいなと思っています。そのときに『あの時の悩みはもうどうでもよくなっています』という状況になっていたら嬉しいですね。


「タニモク」編集部より

仕事モードとは違うシチュエーションで、「感情」という日頃出しにくいものを出して互いの理解を深める。そのために、出しておける「事実」は事前に運営の方で出してしまう――。参加者と運営の役割、趣旨、合宿の構成が明確だったからこそ、理解の深化や関係性の構築がより効果的になったのでは、と感じるお話でした。

鈴木さん、山下さん、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
当日ファシリテーターを務められた日部谷さんも合宿の様子をまとめてくださっていますので、こちらの記事もぜひご覧ください。


「タニモク」の台本や映写資料は、公式ホームページよりすべて無料でダウンロードできます。
友人同士や組織で「タニモク」を実施したいという方は、マニュアルをチェックしてみてください。
実際に「タニモク」を体験した後は、「#タニモク」をつけて感想を発信していただけたら嬉しいです。みなさんの投稿も楽しみにしています!