【インタビュー】「ほどよい距離感」の仲間と過ごす最高の時間。3名の「タニモク」
こんにちは!「タニモク」編集部です。
noteでは「タニモク」を実施された団体や個人の方にインタビューを行い、活用方法や効果などをご紹介しています。
今回お話を伺ったのは、3名で定期的に「タニモク」を開催されているという、河原あずささん、藤田祐司さん、若宮和男さん。
このメンバーで定期的に「タニモク」を開催する理由や、1回で終わらない価値などを深掘りしていきます。
「タニモク」との出会い
ーまずは、皆さんが初めて「タニモク」に参加された時期を教えていただけたらと思います。
藤田さん:2017年に「タニモク」が誕生した頃です。「タニモク」プロジェクトリーダーの三石さんとは以前からお付き合いがあって、実験的に「タニモク」をやるということで声がかかり、テストランに参加させていただきました。
河原さん:初回は2017年4月の走り出しの頃なので、藤田さんと同じくらいの時期だと思います。三石さんと現「タニモク」アンバサダーの日比谷尚武さんがSansanの本社で開催された会があって、そこに参加したのが最初の接点です。
若宮さん:私は、2018年の2月にお二人から誘われたのが最初の「タニモク」です。
ー「タニモク」プロジェクトの正式な発足が2018年9月。それ以前から現在までご活用いただいて嬉しいです。若宮さんはこの3名での実施が初回だったんですね。
若宮さん:はい。実施する前からさまざまなところで「タニモク」という言葉を聞くようになり、ワークショップの存在は認識していたんですが、やり方や細かいルールは知らなかったんです。そんな時に藤田さんから急に「●日の夜、空いてます?」と連絡が来まして。
河原さん:僕と藤田さんが会っているときに「タニモク」をやろうという話になって、その場で藤田さんから若宮さんにメッセージを送ってもらったんです。当時「4人で」というのがレギュレーションだったのですが、4人目にしっくりくる人がいなかったということもあり、「とりあえずこの3人でやってみるか」というノリで始めました。
実施内容
ー2018年の初回から、現在4年が経ちます。開催頻度はどのように設定しているのでしょうか?
藤田さん:最初は「半年に1回」など定期的に行っていましたが、2018年の後半からは、お互い仕事や私生活に変化のあったタイミングで開催しています。誰かがメッセンジャーで『頭を整理したいので、そろそろ「タニモク」やりませんか』とメッセージを送ることで開催が決まり、それが半年から1年のペースでやってくるという感じです。
ーファシリテーションはどなたが行っていますか?
河原さん:初回開催時は参加経験者が僕と藤田さんだったので、2人で「こんな感じだったっけ?」と言いながら結構手探りでやりました。最初は時計を用意して細かく時間も計っていましたが、慣れてくると「じゃあ、次は誰やる?」というように、自然とお互いが流れを読みながら進めていく形に落ち着いていきました。自分たちがやりやすいように、段々とアレンジを加えている部分もあります。
ー毎回、どのようなテーマ設定をしているんですか?
藤田さん:傾向として年始の1月、2月にやりがちではあるんですが、「今年の目標をたてよう」というような、きちんとしたテーマ設定はしていないですね。開催のタイミングで前回からの振り返りをして、「タニモク」でその時点から先のことを考えています。
河原さん:3人とも、この数年で仕事でもプライベートでも結構大きなライフイベントがあったので、お互いの近況交換がてらとか、「久々に話したいなー」というタイミングで声をかけて、ゆるーく進めている感じです。
「前回から今回までどういうことに注力していて、現状こんな感じで」というのを共有して、「ここからどういうことをやっていったらいいだろう」というのをお互いギブしあう、そんな建付けでやっています。
開催時の工夫
ー先ほどアレンジをしている部分があるとのお話がありましたが、具体的に聞かせていただけますか?
河原さん:大枠は変えていないのですが、各自のスケジュールが立て込んでいることもあり、タイムテーブルは結構コンパクトにしています。
まず、全体で90分から120分くらいの時間枠を確保するんです。120分の場合、3分割すると1人あたり40分くらいなので、30分ほど近況報告や質疑応答をして、残りの10分で「こんなことをやったらいいと思います」とフィードバックをもらいます。
近況報告は、まとめた紙を事前に用意してくることもあれば、他の人が話している間に書く場合も、口頭だけというケースもあります。最近はZoomでオンライン開催をしているので、画面共有をすることも多いです。その辺りはゆるーくやっていますね。話す順番も特に決まっていなくて、その時の気分で回しています。
近況やフィードバックは、3人のメッセンジャーグループに投稿しています。そうすると、後から見返すことができて便利なんです。
藤田さん:河原さんはきちんと近況報告を準備しているんですが、残りの2人は、比較的その場で書いて写真を撮り、メッセンジャーにあげて、それをベースに話すことが多いです。以前は「この時期に何があって」ということを細かく書いていた時期もあったんですが、最近はメモ帳に簡単に近況のポイントを書き出し、コミュニケーションをとっている気がします。
ーマインド的な準備は何かされていますか?
藤田さん:主には、過去を振り返っておくことくらいでしょうか。前回どこまで話をしたかというのは、正直そこまで覚えていないんです。当日のメモも、ざっくり1年くらいを振り返って、ライフステージに大きな変化があったものがあれば書き留めていく程度で。それを大見出しにして話をする中で、「こんなことをやって」「こんなことを考えていて」「自分の役割がこういう風に変化したよ」と伝えています。
若宮さん:僕は、結構、事前準備も心の準備もせずに臨んでしまいますね。「タニモク」の中に振り返る時間があるという安心感もありますし、3人ともモデレーターのような仕事をしていて、お二人が質問で引き出してくれるのがとてもうまいので、自分であらかじめ整理をしておくより、その場で深掘ってもらう方がいいと思っています。そういうスキルのあるお二人が揃っているというのは、他にはあまりないケースかもしれないですが。
河原さん:ジャーナリングの一環として、個人的に年始や年末に1年の振り返りをやっているので、その情報がある程度入った状態で臨むことはあります。1年や年度の節目でもない時は、お二人同様、直前にちょっと思い出してみるくらいです。
心理的安全性が確保された状態で言いたいことを言い合える場になっているので、顔を合わせた瞬間に話したいことが浮かんでくるというか、話しているうちに芋づる式に色んなことが出てくるという印象があります。
「タニモク」を継続する目的、得られた効果
ー「タニモク」は、皆さんにとってどのような場として機能していますか?
藤田さん:1つは「自分を時々振り返る貴重な機会」、もう1つは「自分に見えていない新しい視点を見つける場」ですね。仕事や私生活では結構近視眼的になってしまう傾向があるので、信頼できる人から引いた目線で「あなたはこっちに向かっているけど、こっちもおもしろいんじゃないの?」と道の可能性を示してもらえると、広がりが生まれるんです。そして、この3人の「タニモク」は、「やれば何かが見つかる」という感覚があります。
若宮さん:「背中を押してもらえる場」というのもありますね。自分でも「本当はこっちなんだろうな」と思っているけれど、もう一方も手放せず中途半端な状況になっているときに、「いやー、もうこっちじゃない?」と、改めてそちら側に補助線を引いてもらえるんです。家族や会社のメンバーには話しにくい部分を吐露できる関係なので、「こっちじゃない?」と言われたときに「やっぱりかあ」と納得感があります。
河原さん:僕は、「いい感じにチューニングされた"先の方向性"が見える場所」としての位置付けが強い気がします。例えば、会社の方針が自分の本質的にやりたいことと少しずれているかもしれないというときに、お二人はそこを見事にピンポイントで見抜いて、「こうなんじゃないの?」と僕のキャラクターにあわせて伝えてくれる。そうすると、方向性が調整されて、いい感触で物事が積みあがっていくんです。
2019年の1月にオフラインで「タニモク」をやったときに、お二人から「本を書いた方がいい」という目標が出てきたことがありまして。同じタイミングで、藤田さんには、僕と若宮さんで「本を出したらいいんじゃないか」と言ったんです。その帰り道、藤田さんと「本、一緒に書いたらいいんじゃない?」という話になって、共著の『コミュニティづくりの教科書』が生まれました。お互いに向かいたい方向性が確認できることで、「一緒にこういうことができるんじゃないか」と、偶発的に物事が発生することも大きな魅力だと思います。
ー「タニモク」の「目標を提案する」というメソッドについて、どのように感じていらっしゃいますか?
藤田さん:ただ引き出すというより、背中を押す要素が大きくあると思います。相手の話を聴いていくうちに、こういう風にありたいんだろうなというのが見えてくるので、それがいい方向だと思えば「やればいいじゃん」とメッセージを発信する、という流れが多い気がします。
河原さん:それを受けて、僕や若宮さんは「ですよねー」「それやった方がいいですよねー」というリアクションをすることが多いです。最後に背中を押されて、「そうか、やらなきゃだよね」という気持ちになることはたくさんありますね。
若宮さん:あとは、コーチングやメンタリングに比べると、タイムスパンが少し先の未来だというところがおもしろいと思っています。先ほど「背中を押してもらえる」とは言ったんですが、【前方補外(Excelでグラフを作成する際に未来予測をする機能)】というか、お二人から「今のベクトルでいくと、ここだよね」と先にドットを打ってもらえるから、向かうところが見える。これはメンタリングとかコーチングの「現状こうした方がいいですよ」という提案とは、ちょっと違うドライブのかかり方をする気がします。
河原さん:「タニモク」は、バランスがいいですよね。コーチングは基本的に「こうした方がいいですよ」と言うことがないですし、メンタリングは行き過ぎると「こうしたらいい」の押し売りになる危険性もある。
「タニモク」はほどよい距離感の中で、きちんと話を聴くターンがあって、その後に一言提案をするターンがある。それがいいバランスになるよう共通ルール化されているところに妙があって、すごい発明だなと毎回思います。
ーこれまでの他のメンバーからの提案で、印象に残っているものを教えてください。
藤田さん:先ほどの書籍の話は、今でも明確に映像として覚えているくらいインパクトに残っていますし、アクションにもつながっていることです。
他には、2020年のコロナ禍に入るタイミングくらいの「タニモク」でコミュニティ関連のビジネスの話をしたときに、若宮さんからは「ただコミュニティづくりをするだけではなく、それと経済のつながりを考えた方がいい」、河原さんからは「自分の価値観をもっと発信した方がいい」という提案が出たんです。それ以来その2つを意識しながら仕事や発信をしているんですが、そうすることで色んな話が舞い込んできたり新しいアイデアが浮かんだりしているので、結構きっかけになっているなと思います。
それから、「せっかくグローバルな会社なんだから、グローバルであることをもっと活かした方がいい」というのはこの4年間でお二人から度々言われているので、自然と組織づくりにも「いかにグローバルであることを活かせる組織、チームにしていけるか」と考えるようになりました。先ほどの「未来に対して点(ドット)を打っている」ではないですけど、そういう効果があるというか、結果として行動に反映されている印象です。
若宮さん:2019年当時「YourNail」(オーダーメイドネイルシールアプリ)という事業をやっていたんですが、分社化の決定打が「タニモク」だったりします。
もともと、1つの事業をやるより、新しい事業をつくったり、女性の起業家を増やしたりと、他のことを横展開していきたいと思っていたんですが、「いまはネイル事業を自分で伸ばさなければ」と、ちょっと手放しづらい部分もあったんです。
そこで、「若宮さんのバリューから言っても、これを自分で持っているより、分社化して新しいことを始めた方がいい」というアドバイスをいただいて、結果的にその年に分社化し、さまざまな事業を創出する『Your』というインキュベーションの仕組みに昇華しました。
もちろん経営戦略としても考えてはいたことではあるんですが、決定打のタイミングとしてすごく大きなインパクトが「タニモク」ではたくさんあると感じています。
河原さん:僕は、共著本のタイトルを考えている時期にやった「タニモク」で、若宮さんから「ただのノウハウ本にしない方がいい」「哲学や思想のエッセンスが入ると、よりお二人のキャラクターやコントラストが見えてくるのでは」というお話があったことが大きいです。本の中でも「コミュニティ思考」という言葉を結構ハイライトしていますし、出版後もキーワードがずっと自分の中に残っていて、今の会社の活動もそこを軸にしているところがあります。
お二人にヒントをもらいながら思考や方向性が言語化されると、それが軸となって自然と行動を選択できるようになるんです。だから、何かやるときには「若宮さんなんて言うかな」「藤田さんなんて言うかな」と、お二人の残像が常にある状態で行動が決まっているような感覚ですね。
目標やグループ継続のコツ
ー「タニモク」編集部には、「目標を決めてもなかなか続かない」というお悩みが多く寄せられます。目標やそのための行動を継続するにあたって、意識していることはありますか?
藤田さん:僕の場合、いいフィードバックをもらっても、行動しないと1カ月もすれば忘れてしまうんです。なので、アドバイスをもらったら、1つでもいいので、できるだけ早くアクションを起こすようにしています。習慣化できるものは習慣化してしまうと、気が付くと『この習慣って「タニモク」起点でやったやつだ』ということが増えていますね。
河原さん:もしかしたら、こういう話ができる人を見つけて、定期的に話をする、というのが一番の早道かもしれないです。この3人はお互いのビジネスステージの高さや状況が結構似ている位置にいるので、「今こういう状況なのか」というのを割とコンテキストも含めて理解しやすいですし、オープンに物も言えるんですね。だから、「タニモク」のタイミングはもちろんですが、他のタイミングでも『あの時の「タニモク」の話の続きなんだけどさ』と相談しやすいところはあります。
そういう人を見つけて、定点観測をしていくおもしろさがわかってくると、お互いに「最近どうです?」と声をかけるようになるので、自然と行動も続いていく気がします。
ー「タニモク」を1回で終わらせない、グループとして継続するコツについてはいかがですか?
河原さん:続けようとして続けている訳ではないんです。ではなぜ習慣化できたのかと考えると、「味をしめているから」なのかなと思います。これまでこのメンバーで「タニモク」をやってきて、自分の活動が確実によくなっているという実感があるので、「これは自分にとって続けることが大切な活動だ」と認識しています。
あとは、純粋にこの3人で話すのが楽しいんですよ。少なくとも1年に1回、「この3人で目の前に追われないことを話したい」というモチベーションが強くて、そこがすごく大きいと思います。
若宮さん:続けようとしていないというのはありますね。このメンバーの場合、「●月にやりましょう」「半期に1回やりましょう」とあらかじめ決めてしまうと、やらなくなる気がします。
それから、「気負わない」ということもポイントかなと。「この場に何かを持って行って、何かを決めてこないといけない」とか「この1年でこれだけ進んだぞと言いにいかなければいけない」という場だとつらくなってしまうので、がんばって目標を決めに行く場所じゃないというのが、この3人らしくていいと思います。
藤田さん:毎回違う人とチームを組んで、そこから「半年後にもう1回やりましょう」という動きが出ることもあると思うんですが、「タニモク」を継続していくという意味で言うと、【いいメンバーで定期的にやる】というフォーマットも1つ持っておくことが重要だと感じます。安心して話ができる場を作れると、「タニモク」がより深められると思います。
河原さん:この3人には、人を集めるコストも手間もないんですよね。誰かがやりたくなったときに「来月あたりやりませんか?」と連絡してスケジュールさえ確保できれば、基本的に何も準備がいらない。そこの気楽さが担保されていることが、すごく大きいと思います。
もちろん、ランダムに集まった4人でやることにも、人との出会いや新しい発見があっておもしろいと思います。なので、そのような場に積極的に参画するという方法の他に、「このメンバーだったらふらっとできる」状況も持っておいて、気楽にいつでも「タニモク」ができる状態をキープすることが大事な気がします。
今後について
ー今後は、どのように「タニモク」を活用したり、グループを継続したりしたいと考えていますか?
藤田さん:「個人的にチャレンジしなければいけない」「背中を押してほしい」「話を聞いてほしい」「ちょっと迷いが生じた」など、変化があったタイミングでチャットが立ち上がるーーという感じで、多分これからも同じようにやっていくんだろうなと思います。続けようというより、その時にぱっとやる感じで自然と続いていくのかなと。
若宮さん:僕もそんな感じです。「タニモク」初期の頃はもうちょっと近い関係だったり、日頃から会う頻度も高かったりしたと思うんですが、近くなりすぎると、「タニモク」の関係としてはしがらみが生まれる可能性もある。今は利害関係が全くない状態で、ちょうどいい距離でアドバイスをもらえているので、この関係が続けばと感じています。
先ほど河原さんが言っていたように、「タニモク」が話す楽しみになっている部分もあるので、日頃から会う頻度としては、この「もうちょっと頻繁でもいいのかな」と思うくらいの「腹八分目の距離」がいいのかもしれないですね。
河原さん:ゆるーく続いていく気がします。ここまで来ると、親戚とまではいかないけれど、【いとことたまに会って、「最近どう?」と話をする】くらいの関係なんですよね。適度な距離感で衛星がぐるぐる回っている、たまに衛星同士がクロスする、そういう感じなのかなと思います。
若宮さん:確かに。それくらいの頻度で集まるので、それぞれが分かれたあとに、「こんな方向に進んでいるんだ」という、お互いの変化もおもしろいですよね。「タニモク」で「次はこうしたらいいんじゃないですか」と言ったことが、次のときに答えあわせじゃないですけど、あの行く末はどうなったんだろうっていうのがわかる。
河原さん:コーチングやメンタリングはその場が終わったら関係が切れることの方が多くて、相手のその後を追えないんですよね。このメンバーでの「タニモク」は定点である程度回っているので、「あのときのアドバイスをもとにうんぬん」とその後が聞けるおもしろみはとてもあると思います。気負わずに、ゆるく家族以外の誰かのメンターになれる人生って、非常に楽しいです。
「タニモク」編集部より
河原さん、藤田さん、若宮さん、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
お三方ならではのほどよい距離が、その場の空気感や納得感、信頼関係につながっていることが、お話の端々から伝わってきました。
今回のお話は、目的や行動を継続したいと考えている方、「タニモク」を定期的に行いたいと考えている方の参考にもなるのではないでしょうか。