【イベントレポート】「タニモク」フェス DAY2:パーソルキャリアの活用事例「ChatGPTによる目標支援」
こんにちは!「タニモク」編集部です。
「研修や1on1だけに頼らない社員のキャリアオーナーシップの向上」をテーマに、2024年1月10日(水)11日(木)の2DAYSでオンライン開催された人事限定「タニモク」フェス。今回のイベントでは、DAY1に「タニモク」未体験の方にワークショップを経験いただき、DAY2はゲスト企業3社に活用事例を紹介いただいた後、テーマごとに分かれて「実践共有会」を行いました。この記事では、「ChatGPTによる目標支援」をテーマに「タニモク」×「テクノロジー」での活用を発表したパーソルキャリア株式会社の事例を紹介します。
※ChatGPTには会社や職務の機密情報を投稿しないでください。情報漏洩にあたるため、ChatGPTの使用は自己責任でお願いします。
■登壇者
長谷川 智彦(人事本部 人事IT推進部 HRDXグループ リードデータストラテジスト)
三石 原士(「タニモク」プロジェクトリーダー)
パーソルキャリアと「タニモク」
パーソルキャリアは、「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」というミッションを掲げています。はたらく一人ひとりが、キャリアオーナーシップを持ち自分で選択肢行動する、そんな社会をめざしています。「タニモク」もその一環としてサービスを提供しています。「タニモク」を開発しさまざまな企業団体で使用されるようになり、徐々にキャリア対話の機会が増えてきている、という実感をしています。実際、累計で1,000人以上の方に「タニモク」を体験いただきました。
例えば、入社時の研修、キックオフ、社員合宿、一年の振り返りなど、特に最近ではダイバーシティ研修などでよく使われるようになっています。また、パーソルキャリア内でも「タニモク」も含めキャリア対話の機会は格段に増えています。
■今回の課題とその解決方法とは
<「タニモク」及び、目標設定後の課題>
しかし、「目標」や「今後のこと」を考える機会は増えているけれど、目標が行動の具体化に結び付きにくいというのが実情です。「目標をたてっぱなしで行動できていない」という状況を鑑み、今後の目標がより具体的な行動につながる支援が必要なのではないかと考えました。
<具体的な行動に移せる人から考える「キャリア対話」>
では実際行動に移せる人は何が違うのか。それは「ベイビーステップを踏めるかどうか」です。つまり、行動を具体化・細分化して小さな一歩でも踏み出せる人が強い。またそのあと、トライアル&エラーを続けられるということもわかってきました。
この具体化や細分化を一人でやるのは大変です。上司や同僚に1on1をお願いして…ということもできますが、時間的に難しいことも。そこで、テクノロジーでキャリア対話ができないか、と2023年に話題となった生成AI、特に「ChatGPT」のプロンプトを作って検証してみることになりました。
※詳細のプロンプトについては公開できませんが、検証結果について掲載します。
■ChatGPTを使った目標支援とは
まず、試験的に目標をたてたときに欠けている点を指摘するプロンプトを作成してみました。SMARTという、目標を機械的に評価するフレームワークを使っています。
このフレームワークを用いて、「目標達成をさせるコンサルタント」をプロンプトに打ちこみます。すると、ChatGPTは、目標を評価し、足りないところを指摘します。結果、自分自身の具体的な行動につなげられ、考えの整理に役立つという所感がありました。
そこで、上記の応用として、ChatGPTを「タニモク」の目標のサポートもできる「目標設定プロンプトを作成し、その有効性を検証するということ」を今回行ってみました。
※参考
<「タニモク」×ChatGPTの活用テスト概要>
「タニモク」に参加したことがある人で、今回のテストを希望した社員、8人に実施しました。
施策の意図は「目標や行動をより具体的にし、アクションできる状態にする」としました。さらに、具体化を進めるだけではなく、問いが続くことで自分の理解を深めるコーチングに近いものが行える禅問答のようなプロンプトも作成しました。
<今回のプロジェクトにおけるChatGPTの使い方>
すでにプロンプトの入力が終わった状態で、下記を行います。
これを「目標設定プロンプト」及び、「禅問答プロンプト」両方で行いました。
■「目標設定プロンプト」
<概要>
漠然としている目標を具体的に行動に移せる状態にする、というプロンプト設計をしています。目標設定のプロンプトは、開始するとChatGPTから「最初に設定した目標」をもとに、「一年後の目標」と「直近一カ月の目標」を問いかけられます。その後、明日あるいは今月どういった行動するかを決めていく問いが投げかけられます。最終的にはその行動を実現できるよう、きっかけ(トリガー)を何にするか、というところまで整理します。
<プロンプトの工夫点>
・トリガーの設定
行動を行うためのきっかけ作りをプロンプトに入れています。行動に移すには、何かしらのきっかけ(トリガー)が必要です。例えば、電車に乗ったらニュースを見るといったものです。これは、ニュースを見るときのトリガーを「電車に乗る」に設定するということ。トリガーがあれば、行動につながりやすくなります。よって、このトリガーを設定しやすいようにプロンプトを作っていきました。
・進行度の可視化
もう一つ工夫を入れているのが、進行度です。問いかけで目標を決めたら、今度は必要な事項を聞かれます。その事項を埋めていくことで、具体度が増し、それが進行度100%に近づいていきます。すこしゲーム的な楽しさも追加しました。
<体験した人の反応>
目標がはっきりしている人にはポジティブな反応が得られました。また、感情面での理解やどうしてそう考えたか、というChatGPTが苦手な部分はネガティブに働いたと考えています。
■「禅問答プロンプト」
<概要>
上記の「目標設定プロンプト」の感想で、「目標がまだ定まりきっていない人」が具体化するために掘り下げたいという要望がありました。そこで「ずっと問いが続く」禅問答のプロンプトを作りました。
<プロンプトの工夫点>
・仕事だけではなくプライベートも聞く
自分のことを伝えた上で、再構成できるようにプロンプトを設計しました。仕事だけではなく、プライベートも考慮することで、その人の背景がより明確になります。結果、その集めた情報、引き出した情報を元に、再構成された情報がアウトプットできるという作りです。
・コーチングの実際の質問例を入れ込む
実際のコーチングの場面でも使われるような質問を使用することで、趣味や特技など一見関わりがなさそうなことでも、「誰と進めていきたいですか」「今どんな状況ですか」ということに結びつき、少し予想外な要素も入れ込んで提案してもらえる。また、最終的に、目標の具体化に辿り着くようなプロンプトを作成しました。
<体験した人の反応>
次から次へと質問が来るので、自分で言語化する必要があります。また、それに対し自分の考えをまとめてから回答することで、自分の内面が引き出されたように感じられるという効果が得られました。しかしここでも問題なのは「目標が少しでもある状態でないと難しい」ということでした。
■まとめ
この結果を受けて、このプロンプトを効果的に使うには、どんな人にどう使ってもらったらよいのかを考えました。それは、大きく4つに分けられます。
まず1~3に該当する人は、事前に「タニモク」で目標設計のお手伝いが必要だと考えています。そのあとにChatGPTでより深堀していくことができます。すでに具体性のある目標になっている4の人は「タニモク」ではなく直接ChatGPTを会話することで、より具体的に言語化し、実現に近づけます。
つまり「タニモク」とChatGPTを掛け合わせて使うことで、目標設計から目標支援までが可能になります。また、時間、場所、人を選ばずにできるので、キャリア対話の機会を増やすことができ、より行動に繋がりやすくなるでしょう。